序章

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序章

夏休みのある日の事だ。 オレは大学の課題をやる訳でも掃除するわけでも、ましてや誰かと遊びに行くことも無く、、ただ·····冷房の効いた部屋でお笑いテレビを見て笑っていた。 (このコンビ本当おもしろ) 机に置いていた煎餅に手を伸ばす。 その時、、、 知らない番号から電話が来た。 (はあ?、誰だ??) 見ていたテレビを邪魔された気分になりつつもその電話に出る。 「────·····もしもしぃ?」 早く要件だけ聴いて切ろう·····それくらいの軽い気持ちで。 「··········小宮(こみや)ぁ?オレオレ」 (誰だ?) 新手のオレオレ詐欺かなにかか? 「オレオレじゃわかんねぇわ」 「あ〜だよなぁ、俺東乃(とうの)。ほら中学三年の頃一緒のクラスだったろ?」 東乃························· 記憶を呼び起こす。。。 「!、あ────·····、、、掃除の時教室の床水浸しにして先生に怒られた?」 「それっ!!その怒られた張本人www」 やっと思い出したのがその記憶だった。 中学の記憶はあまりいい思い出も印象的な思い出も無かったから·····。 「で?その東乃がオレに何の用?」 正直面倒臭い。 早く電話を終えてテレビが見たい。 オレの面倒臭いという気持ちが伝わったのか、東乃が「うわぁ·····めんどくさいと思ってんだろ?」と笑いながら言う。まぁ、実際思ってるから否定はしないが。 「用がないなら切るけど?」 「いやいや!まてって、ある·····あるからっ!」 (なら、早く言えよ) だんだん苛苛してくる。 「 ····················あのさ、、加藤覚えてる?ほらっ中学の時女子にモテてた奴」 東乃は少し黙ったかと思ったら次はテンションが下がった様な低い声で話し、加藤を覚えてるかと聞いてきた。 「全然関わりなかったけどな。で、その加藤がどーした?」 有名人と結婚でもしたのか? それとも子供が出来たとか?? もしくは犯罪にでも手を出したのか? (まぁ··········オレには関係ない話だ) 「アイツ死んだらしい·····」 「へぇ」 やっぱり自分には関係なかった。 同じクラスや部活が一緒だったならまだしも、クラスも違う、部活も違う····接点なんて全くもって無い。 「で、今週の土曜に通夜行く?他の奴らも行くらしいからさ」 「あ────·····いや、オレはパス。加藤と全然関係なかったし」 通夜とか葬式って友達とか家族とか··········接点があった奴が行くもんだろ? 「わかった、わるいな」 「いや、こっちもわざわざ電話ありがとう」 そう言って通話が終わり携帯を机に置いてオレはベッドへダイブする。 「加藤················加藤····かぁ、、」 そういえば·····どんな顔だったっけ? 思い出せん、、、 ベッドから上体を起こし押し入れを開けて中学の頃の卒業アルバムを探す。 「··························································」 「やっとあったぁ〜〜〜〜〜〜」 探し始めて二時間が経っていた。 ボロボロになった卒業アルバムを開けて加藤を探すと3年C組の生徒写真の中で発見する。 「はぁ·····イケメンってこーいうやつを言うよな」 確かに中学生にしては顔が整い過ぎて·····神様がいるなら不平等だと思う。 オレはというと、3年A組で────····· 「ぷっ、、オレ無表情すぎ」 思わず自分自身の顔で笑った。 加藤の顔を確認して満足したので卒業アルバムとそれを探す為に出した大量の物を押し入れにしまい直し始めるが中学の頃使っていた携帯を見つける。 「なっつかしー」 懐かしくなって充電が切れている携帯へそれ用の充電器を探し充電·····。 五分くらいたった頃に電源を入れると画面が真っ暗な画面から明るい画面へ変わった。 中学の頃のオレは何のデータを保存してんだろ? 早速フォルダを開く。 当時好きだった歌手の画像やエロい画像、、、後は風景や家族との旅行の写真とか···············まぁ平凡なものばかりだ。 次はメールを見ようと指を動かす。 当時は今みたいにSNSがそこまで発達していなかったから、基本的にメールか電話だった。 中二で携帯を買ってもらって、次の月に携帯代が6万いって·····かーさんにマジでキレられたなぁ··········はは、、、 ほんと懐かしい 「後は······························ん?なんだこれ?」 受信メールの中で一件目に留まる。 ----------------------------- いきなりゴメン 高木にアド聞いた 卒業式終わったら 裏庭で待ってるから来て欲しい 加藤 ----------------------------- 加藤·························???? かとう?? どーいうことだ? 意味がわからん オレは驚きながらそれに対して返信したのか調べるが履歴が無い。。。 「 マジか·····」 行った記憶も無いという事は─────·····裏庭に行って無いという事だ。 当時の自分は何故行かなかったのか分からない·····いや、行かないなら行かないとせめて返事してやれよ。 自分自身に呆れる。 加藤すまん·········· 死んでしまった中学の頃の同級生に今更申し訳ないまま、古い携帯の電源を切って押し入れへ片付けていく。
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