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親父は母と結婚する時、母のことを全く知らなかったらしい。
親が決めてきた相手に初めて会った時には、もう両家の結婚が決定しており、嫌も何も言うことができなかったらしい。
俺は恵まれている。会った事もない相手と結婚するなんて考えられない。
結婚して初めて分かった。婿養子として家に嫁いだ親父の不自由な人生と、不器用ながらも、俺に対する精一杯の愛情が。
親父は昔からあまり多くを語らない。それでも、その背中にたくさんのものを背負って、今まで生きてきたんだな。
自分の夢を諦め、家族のためだけに、その命を捧げてきたんだな。
結婚から1年後、俺は自分の息子を腕に抱いた。その温もりを、命を、切なくなるほど全身に感じた。
同時に、無口な親父のいじらしさが胸を締めつけ、俺は大人になって、初めて泣いた。
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