僕の中に在るもの

子

　高校を卒業した俺は、自宅近くの自動車整備の会社に就職した。

　完全なる肉体労働だが、元々身体が頑丈な俺はあまり苦にならなかった。

　野球はそこそこうまくなったが、プロになれる訳はなく、野球は趣味で続けながら、新しい生活を始めることになった。

　新しい生活は楽しかった。やっと一人前の給料をもらえるようになった俺は、家を出て一人暮らしを始めた。

　実家の農業は農繁期に手伝う程度となり、俺は専ら自動車の構造を頭に叩き込んだ。

　知れば知るほど、その精密さに感心し、知ることが楽しくなった。

『好きなことをとことんやりなさい』

　今になって、親父の言ったその言葉の重みが身に沁みて分かるようになった。