1.ナ行の棚

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 夏田の「ソロモンと猫」は、叔父(母の弟)にずっと恋している甥っ子の片思い話です。  甥っ子の達也からみた叔父の良介さんのキャラクターは、とても格好よくて、何を考えてるのかよくわからなくて、でもたまに不意打ちで優しくて……というふうに考えて書いてみました。  大人の男はどうあってほしいか、年下の男に対してどんなふうにふるまってほしいかということを考えるとき、私はいつも、長野作品の男の人を思い浮かべてしまいます。  こんな告白をするとドン引きされるかもしれないけど……、私は長野作品の二次創作をしてるのかもしれないんだなぁ……。 ◆  ここに、こちらも私が愛してやまない『レモンタルト』という作品があります。こちらははっきりとボーイズラブで義兄弟もの(もちろん一般文芸の棚に並んでるよ!)。主人公の「私」にとって義兄は、若くして亡くなった姉の伴侶。いまも結婚指輪を外さない義兄に、せつない片思いをしている若いサラリーマンの物語です。  また少し引用いたしましょう。「私」がある事情からある人物に乱暴されて倒れていたところを義兄に助けられて帰宅したシーン。ここでの義兄の無自覚煽りが実にけしからんのですよ(もっとやって)。 --<引用ここから>------------------ 「けがの心配はしてくれないんだね、」 「憎まれ口をきく元気があるんだから、たいしたことはないよ。」そう云いつつも、氷をビニール袋につめて、頭へあてがってくれた。 「……枕をとってきてもらえるとありがたいな。」 「とびきりの枕をサービスしてやる。」と、義兄はひざを貸してくれたので、私はうろたえた。 「……遠慮しておく、」 「なんでだよ。」 「豪勢すぎて、……落ち着かない。」 「ふうん、そういうものか?」  義兄はおもしろがって、私の顔をのぞきこんでいる。近すぎる。傷の痛みどころではなくなった私は、義兄のひざからのがれて床へ横になった。 --<引用ここまで>------------------ 長野まゆみ『レモンタルト』講談社文庫  こんなにはっきり矢印を出している義弟の思いに応えるつもりもないのに、ひざを貸して顔をのぞきこむってどういうこと?(じたばた)このほかにも「つきあってあげてよ、もう……」とモダモダするシーンが無数にあってですね(以下自制)。  それで私は自作品「ソロモンと猫」で……叔父に片思いしている主人公の恋をはっきりとかなえてあげたくて……うわーっもうこれは二次創作の精神ではないだろうかーっっ(顔を覆ってごろごろごろん  そして私は先生がデビューされた頃からずっと好きなので、初期作品のあの独特の雰囲気を思い浮かべながら書いた自作品もいくつもあります。もちろんマネしようとしてマネできるものではないけれど。  このエッセイ的な何かでは、この後もたびたび長野作品に触れることになりますが、よろしければ次回もまたおつきあいください……。  もうおひとりのナ行の作家、中野京子先生についてはいずれまた別の機会にお話しいたしましょう。  最後に、ここまで書いて気づいたんだけど、あれっ、私もナ行の字書きだな!?(あつかましい)  お読みくださりありがとうございました!  次回のテーマは「当て書き」です。私は漫画やアニメも好きで、いろんな作品のいろんなキャラクターを具体的に思い浮かべながら人物造形を考えたり会話文を書くことが多くてですね……。キャラクター設定みたいなお話をしてみたいと思うんだなぁ。  また来週お目にかかりましょう♡
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