2.当て書き

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2.当て書き

 夏田は漫画を読んだり、アニメやイラストを見るのも大好きです。  近年のBLジャンルならばヨネダコウ先生『囀る鳥は羽ばたかない』と、キズナツキ先生『ギヴン』がピカイチ大好き。どちらもBL特化アニメレーベル「ブルー・リンクス」から映像化されています。  そのブルー・リンクス公式ウェブサイトをご覧になったことはありますか? トップページに、三浦しをん先生の文章と丹地陽子先生のイラストによる素晴らしいショートストーリーが掲載されています。  登場人物は、ひとりのサラリーマンと一匹の猫。じつは私、そのイラストSSがあんまりにも好きすぎて……丹地先生の描く彼らに当て書きする感覚で「俺と、しろほしの30日間」を書いちゃった。  ◆  当て書きとは、演劇や映画で、ある特定の俳優に役柄を「当て」て、脚本や物語を「書く」というような意味合いの言葉です。  三浦先生と丹地先生によるショートストーリーでは、猫が人間の姿になって飼い主(あるいは仲良しの人間)のもとにやってきて、二人でごはんを食べて、ベッドで静かに寄り添って――最後はまた人間と猫に戻っている様子が、全五枚のイラストで描かれています。  私は二人の出会いの場面で、猫の化身の青年がテレっと裸足で座っている姿にどうしてだかとても惹かれましてね。ベッドの二人が攻受あいまいな雰囲気なのも、すごくいいと思いました。そんなわけで彼らに当て書きするような気持ちで――つまり、彼らの姿かたちを思い浮かべながら――、「しろほし」の主人公である二人の心の通いあいを書きました(書いたつもり……)。  平凡なサラリーマンの優希は、このイラストの彼そのまま。  人間の姿になって現れる保護猫しろほしは、もう少し幼い感じがいいと思いながら書いたけど、裸足で優希のところにやってくるとか、ベッドではリバ、みたいな設定はこのSSから思い描いたものであります。  「しろほし」を書いているときに丹地陽子先生の初の画集『丹地陽子作品集』(パイ・インターナショナル刊)も発売されたので、私はずーっと先生の画集を眺めながら優希としろほしの話を考えていました。優希の内気でもの静かな雰囲気や、しろほしの天真爛漫さ、こむぎ君のハデハデなファッションとかは、丹地先生の描かれるクールで甘い男の人たちに、それこそ「当て書き」をしていたことになるんだろうねぇ……。  そうそう、別作品「ソロモンと猫」に登場するスーパー事務員・蜜柑ちゃんも、丹地先生のイラストを拝見して人物造形を考えたキャラクターだったりします。  あと少し書いてもいいですか?  次のページは「これはやっぱり二次創作なのではないだろうか……」というくらいがっつり当て書きをした作品と元ネタについてお話ししてみようと思います。
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