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予想外
花梨はずっと忙しいらしく、残業が続いていることは調べたらわかった。そして、週末の今日だけは早く帰ることも。
“あの…こっそり部屋に行ってもいいですか?”
“あー、いいよ。今夜あたりアイツに出て行ってくれるように話すつもりだったから”
“あ、それならまた別の日に”
“いや、いいよ、どうせアイツの帰りは遅いからね”
やっぱり、花梨は今日も遅いと勘違いしているようだ。今日ならば、わざと鉢合わせることができる、そしてそのまま…。
◇◇◇◇◇
そうやって、花梨を部屋から追い出し、駿を私のものにした。花梨が投げつけたアクアマリンの指輪も拾っておいたし、部屋の合鍵ももらった。
キャリーバッグを転がして遠ざかる花梨の足音を確認すると、駿はあらためて私に覆いかぶさってきた。
「好きだよ、すず…」
「あ…うれし…い…」
これであの偉そうにしていた花梨のプライドをへし折ってやった。ショックで来週からはしばらく会社にも来ないだろう。
___やっと仕返しができた
その上、なかなかいい男も手に入れたし。失恋のショックで、仕事も手につかなくなるんじゃないだろうか?周りは、二人が結婚するだろうと思ってたし。
今日は、金曜日。
月曜日が楽しみだ。
◇◇◇◇◇
次の月曜日。
ワクワクしながら出勤して、それとなく花梨の職場へ向かう。廊下からガラス窓越しに花梨の机を見ると
___あれ?出勤してるし
特に泣き腫らしたようにも見えないし、普通だ。金曜日のあの感じだと、しばらくは元気がないだろうと思ってたのに、なんだか予想外だ。
それからも、用事を作っては花梨がいる場所へ行き、花梨の様子を観察する。同棲相手を寝取られた女なら、もっとショックを受けてもいいはずなのに、イマイチ納得がいかない。
ぴこん♪と駿からLINEが入った。
“すずちゃん?いつからうちに来る?”
いい男なのは間違いないけど、同棲しちゃうと自由がなくなりそうだし。
“色々準備もあるので少しずつ、荷物を運んでもいいですか?”
“おう!待ってるよ”
花梨が荷物をまとめて出て行った金曜日。私はそのままあの部屋に泊まった。花梨が残した私物が結構あるんだなと、少々うんざりしたことを思い出す。
___とりあえずアレ、処分してもらってからにしよう
それからもしばらくの間、花梨の様子を見ていたのに、時間が経てば経つほど、元気になっていってるようで、イライラした。
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