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謎?
それからも、折を見ては花梨を観察しに行く。でも、なんだか楽しく過ごしているように見えて仕方ない。
___おかしい、どうして?
実家に帰ったのか?それとも一人暮らしを始めたのか?いずれにしても、結婚しようとしてた彼に捨てられたという悲壮感は微塵も見えない。
ぴこん♪
“今夜は早く帰るから、ご飯食べにいかない?”
駿からだ。
“ごめんなさい、今日は残業になりそう!”
嘘だけど。そんな気分じゃない。今日も私は花梨の様子を覗き見にいく。
___たくさんの人が見てるところで、私を追い詰めて恥をかかせた
あの場面を思い出すだけで今も、こめかみが痛くなる。ずっとチヤホヤされて生きてきた私が、男性の前であんなことになったのは花梨のせいだ。だから結婚間近と言われてた彼氏を、ひょいと横取りしてやった。なのになんであんなにご機嫌なのか?
今日も私は、書類棚の隙間から花梨を見ていた。
「ひゃっ!」
山下望都が背中を、ポンと叩いたことに驚いた様子の花梨が見えた。山下望都といえば、既婚者のはず。その左手にキラリと光る指輪が見えた。
「どうしたんですか?先輩。なんか落ち着きがないですけど?」
「あ、ちょっとね、なんていうか視線を感じて…」
「見られてるとか?」
「うん、それもどこからかわからないんだけど。誰かもわからないし」
ふーん、と言いながら周りを見渡す望都と一瞬目が合った。
___気づかれた?
慌てて花梨から目線を外したけど、望都はなにも気づかないフリをしているが、カシャと小さな音がして、写真を撮っている。
___撮られた?
私がここにいて花梨の様子を伺っていることがバレた?でもそれならそれでいい。出て行って合鍵でも見せてやろう。
二人はしばらくスマホで何かをやり取りしていたようだけど。
「じゃあ、先輩、僕はこれから打ち合わせがあるので、また。今度ゆっくり酒でも飲みに行きましょう!」
「うん、ありがとう。またね」
どういうことだろう?既婚者でなければ、望都も人気が高い。
___もしかして、不倫?
あー、そういうことか。望都の奥さんは出産のために今は実家に帰ってると聞いたことがある。
思ったほど花梨がダメージを受けていないのは、望都の存在があるからかもしれない。それはそれで面白くない。
___私の方が絶対可愛いのに、なんであの人ばかり!
納得がいかないまま、その場から離れた。
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