偶然?

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偶然?

今度は望都(もと)が私の買い物カゴを見た。 「あ、そうか、萩原(はぎわら)先輩の分もか。あの人よく食べるから、大変だよね?家事も手伝ってくれないって、花梨さんが愚痴ってたことあったから」 また、顔が熱くなる。なんだかすべてを見透かされているような気がしてくる。 「失礼します!」 いたたまれなくなった私はさっさと買い物を済ませて、駿の部屋へ戻った。 「ただいまぁ」 「待ってたよ、すずちゃん、腹ペコりだよ!」 買ってきたお惣菜をお皿に出すそばから、お箸をつけていったかと思ったら、立ち上がって冷蔵庫を開けた。 「んー、ビール、これが最後だわ。明日よろしく」 「え?」 「ビールならなんでもいいよ、第3のってやつじゃなければさ」 「そうじゃなくて、私が?」 「うん、そう。だって俺より帰りが早いでしょ?」 「明日はわからないよ、それに、重いから」 「そう?アイツだと無くなる前に買っといてくれたんだけどな…」 私に聞こえるように、花梨のことを言う駿に、猛烈に腹が立った。 「私の前であの人の話をしないでくださいっ!」 「え?あ、そんな深い意味はないよ、ごめん、ごめん」 やっぱりこの人と暮らすなんて、できそうにない。花梨はよく我慢してたなぁと思う。けれど、こんなに早くこの人と別れたら、“ざまあみろ”と言われそうだ。そんなことはプライドが許さない。 「あ、そうだ、風呂入るから、お湯はりしといて」 ___は?! 「ごめんなさい、私、用事があるので今日は帰りますね」 「えっ!すずちゃん!すず!」 引き攣った笑いを残して、私は部屋を後にした。声だけは引き留めたけど、私を追いかけてくることはなかった。 ◇◇◇◇ 一緒に住むためにはそれなりの準備が必要だから…なんていう理由で、駿の部屋にはあまり行かなくなった。なんていうか、『花梨の恋人』でなくなってしまった駿は、私にとってはあまり興味がなくなってしまった。 これでもっと花梨が泣いて落ち込んでいたりしたら、内心もっと駿に魅力を感じたのかもしれないけれど。 「じゃあさ、あそこのステーキでもどう?」 私の気持ちが少し醒めたと気づいたのか、今日は美味しいステーキを食べに行こうよと駿が誘ってきた。 「うん、あそこのステーキは美味しいから」 「よし、じゃあ、決まりだ」 会社からは少し離れているけど、それはそれで久しぶりのデートみたいで楽しみにもなる。 ___部屋に行けばそこでご飯食べてスルだけだったし やっぱり私には、同棲なんて無理なのかもしれないなぁと思う。 ステーキ屋さんに着いて、木製の大きなドアを開けて入った。駿の少し後ろを歩く。 「あれ?」 駿が誰かを見つけた。そこにいたのは見知らぬ男性と花梨だった。
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