ハンカチ王子

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ハンカチ王子

書類回収のトレイを持って、最上階の応接室の前に来た。観葉植物と柱の影に隠れて、様子を伺う。花梨と駿が入って行ったあと、二人連れの男性がエレベーターから降りてきた。 ___え?あれ?あの人… ピッタリとしたスーツを着こなすその男性には見覚えがあった。あの店で花梨が一緒にいた男性に間違いない。 ___ということは、ん?それって私情が入ってるんじゃないの? あのプレゼンも、もしかして花梨が仕組んだものだとしたら?それって悪いことだよね? 誰に言うともなく、呟いてしまう。中でどんな話をしているのかわからないけど、あの2人…花梨とあの男性が始めから知り合いで仕事の便宜をはかってたとしたら。その証拠があれば、花梨と駿もぎゃふんと言わせられるかもしれないと思った。 しばらくは、まだ話し合いがあるだろうから、今のうちに自分専用のボイレコを持ってくることにする。何かコソコソ話してたら、近寄って録音してやることにした。 経理部に戻って、デスクの引き出しからボイレコを取り出し、主電源を入れておく。 「あ、芳川さん、企画部、もう行ってくれた?」 「えっと、みなさん会議中だったので、また行ってみますね」 しらじらしいかと思いながら答えた。 トレイを持って、さっきの会議室の前まで戻る。ちょうど会議室からあの男性2人が出てきた。少し間をとってついて行き、知らんぷりでエレベーターに乗り込んだ。ボイレコのスイッチを入れる。 「これから後は、坂口君が指揮をとってやってくれ。あとは、任せるよ」 「はい、やらせていただきます」 ___ん?花梨の相手はもう手を引くということ? それだけしか話さなかった。一階に着きそのまま、また上に戻ってみた。エレベーターの前にいたのは駿だった。 ___そうだ!聞いてみよう 「あの、さっきの男性、この前元カノさんといた人ですよね?ヤバいんじゃないですか?」 「は?何か失礼なことしなかったろうな?」 キッと強く睨まれる。思ってもいない反応で、狼狽えてしまった。 「え、そんな…」 「怒らせたりすると、大変なことになる。もうアイツに関わるな」 「………」 ◇◇◇◇◇ 「なんでなんでなんでなんだよぉーっ!」 「すずちゃん、落ち着いて!ね!」 「これが落ち着いていられる?なんでいつもあの人ばっかり、いい思いするの?どうして私にはいい男が寄って来ないの?」 「はいはい、ほら、もう帰ろうよ、飲み過ぎだよ」 「あ?なんであんたがいるの?」 いつのまにかハンカチ男子の倉本が隣にいて、ここは…? 「おぼえてないの?仕事帰りに飲みに行こって腕掴んでここに連れてきたんだよ」 「そうだった?」 落ち着いて見渡すと、ここはそこそこ高級なお店。 ___あー、またカードの支払いが増える 残念なことに気づいて、テーブルに突っ伏してしまった。 「ほら、帰ろう、送るから」 「タクシー?お金ない!」 「ううん、うちの車呼んだから」 「…え?」
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