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次の日。 いつものように起きていつものように身支度をして、いつものように出勤した。お酒を飲んだ次の日なのに、どういうわけか頭はすっきりとしていた。 ___私が好きな私か… 昨夜の倉本のセリフがずっと頭の中にある。簡単なことのようで、でもそれは難しい気がしていた。何故なら、いままでしてきたことのほとんどか間違っていると思えてきたから。 ___私が私の友達だったらこんな女、イヤだな 仕事も適当で、彼氏を見つけることばかりに気を取られてるなんて。こんな私、あんなに嫌ってたお母さんみたいだと、いまごろ気づいた。反面教師にしてきたつもりだったのに、同じ轍を踏んでいる。 ___変わらなきゃ!でもどうやって? 倉本に言われたことで、なんとなく自分がこれからどうしたいのかわかった気がするけれど、具体的にどうしていいかがわからない。こんな時に相談できる友達も私にはいないんだと気づいて、またショックを受ける。 頭の中はあれこれ考えているのに、いつものようにルーティンになっている仕事をこなしていく。集めた書類を確認してパソコンに入力する。 「あの、失礼します」 モニターを見つめて仕事をしていたら、いつのまにか見知らぬ女性が、目の前にいた。 「はい?なんでしょうか?」 「経理のことはこちらでと伺ってきたんですが…」 話を聞くと、花梨が提案した新製品を具体的に作る会社の人だと言う。 「申し遅れました、私、MICカンパニーの日下(くさか)千尋(ちひろ)といいます」 そう言われて名刺を見せられた。肩書きは、統括部長?え?見た目は私とそんなに変わらないようなのに。 「あ、その肩書きは、気にしないでください。とりあえず何かあった方がいいからと社長が勝手に付けてるだけですから」 「はぁ、でも、あの…」 「こちらでのお仕事は、基本的に私が任されていますので今後ともよろしくお願いしますね」 「はい、あっ」 こちらこそ、と言おうとして立ち上がってぐらついた。 「そのピンヒールじゃ、仕事しにくそうですね。ネイルももう少し短い方がキーボードを打ちやすいかと。よけいなお世話でしょうが…」 「えっ」 「あなた…えっと芳川さん?すごく可愛いんだからこれで仕事ができたら、無敵ですよ」 「無敵?」 「そうです、無敵です。じゃ、この書類を渡しておきますので処理をお願いしますね」 そう言うと、さっさと出て行った。 ___無敵?私が? そうか!仕事は仕事できっちり頑張ればいいんだ!なんて気づいた。考えてみたら、花梨は仕事ができる、それはきっと花梨なりに頑張ったからじゃないだろうか。 次の日から私は、仕事へのスタンスを変えてみることにした。
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