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閃いた
「さすがだね、もう知り合いがいるなんて。芳川さん、可愛いから目立つもんね」
___あれ?
にこやかに私を見る亜里沙の目には、私を羨んでるような気配がない。たいていの女子は、私を羨望の眼差しで見るか、妬むかどちらかなのに。
「可愛いだなんてそんな。研修のときちょっと失敗しちゃったので、おぼえられてたんだと思います」
「研修で?あらあら。でも芳川さんは可愛いから、それだけで許されたんじゃない?」
「え、あ、まぁ… 。講師の先輩にはものすごーく怒られましたけど」
「講師?誰だったの?」
「篠原花梨という先輩でした」
「あー、篠原先輩ね!知ってる知ってる!カッコいいよね?憧れてるの、私」
___憧れてる?
「そうですね、ちょっと怖いですけど」
「あら、そう?怖くなんかないと思うわよ。すらりと背が高くてさ、颯爽としてるよね?」
いいなぁと憧れの目線で話している亜里沙のことが、わからない。可愛いと認めている私のことは、どうして憧れないのだろうか。
営業部の前を通ったら、その篠原花梨の姿が見えた。誰か男の人と話している。
「あ、ほら、あそこ、いたよ」
「…ですね」
「いま、一緒に話している男性はね、篠原先輩の恋人だって噂よ。ここは社内恋愛禁止じゃないからね。お似合いだと思わない?」
亜里沙に言われて、花梨の前にいる男性を見る。背の高い花梨の前にいても、さらに背が高い。顔は王子様みたいだ、それもドSの。見た目だけで私の理想の80%を満たしていると思う。
「ホントだ、カッコいいですね」
思わず本音が出る。
「あの人ね、見た目だけじゃなくて、仕事もできるのよ。同期の中じゃ一番出世してるんじゃないかな?」
「へぇ…」
外見だけじゃなく仕事もできる、ということはお金持ちでもあるということか。私の理想の90%を超えた。そんな彼氏が花梨にいるなんて、悔しい。私に言い寄ってきたのはあのハンカチ新入社員だけなのに。
「なんでも、結婚するみたいよ、ちかいうちにね」
「へ、へぇ…」
ずっと見ていたら、その男性と一瞬目が合った。思わず、ぺこりと頭を下げる。男性も笑顔を向けてくれた。ドキッとした。欲しいかも?と思った。
___あ、そっか!
横取りしちゃえばいいんだとひらめいた。
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