地獄に堕ちる前に刺す

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地獄に堕ちる前に刺す

侮蔑する眼差しで私を見透かしている。 その漢は、(すくな)舵暁と言う変わった名前をしている。 彼から何か期待していたのは、見事に裏切られた。 女性、赤穂(あこう)沙奈江(さなえ)は、何か言いたげな眼差しで、腹の底から怨みを込めて、蔑んだ。 負け惜しみなのは確かだ。 だが、既に狼狽している。 …マァイイ。どうでもいい。そんな事。どうでも。 吐き捨てる様に、そう呟きながら、去っていく。 周りは随分、意気消沈としていた。 重い重厚な空気が辺りに澱んでいる。 その男性と彼女の間にナニがあったのか、もう皆んなは知っている。 なんで… 周りの人々とは裏腹に、そうやって溜め込まれたフラストレーションを、人々を蔑む事で見下して、蔑ろ(ないがしろ)にしたい。 怒りとjokeとは、全く筋違いだ。 上唇を軽く、舌で舐める。 何故か、砂埃の(アジ)がした。 ひた隠しにした、憎悪が酷く、彼女は傍にあったモノを床にドスンと叩きつけた。 もう、酷い目に遭いたく無かった。 舐めている奴等を、壊したかった。 コロシタカッタ。 フ、其れすら本当は願ってもないのかもしれない。 問題は自身の憎しみが、吐き出された時が何よりも怖い。 それは別のモノに変換した方が後々、都合が良かった。 壊したい。 自分を壊す奴等から、自分を護る為にココロに、厚いバリアを張る。 周りの声が鬱陶しくて、堪らない。 私が大人しくしてれば、つけ上がる。 コレだから、この世界から独裁者はなくならないのだ。 砂漠化された土地に、身体が求めたのはコーラだった。 コーラを飲むと身体が冷えた。そう言う成分を使っている。都合が良い。 自分が辛い最中に居る時、正論は通じない。 マトモでいられない。 その、余計な荷物は要らない。 自分が怖い 怖さから逃れる為の怒りは、消さない方が舐められなくてイイ。 ヘッ、何が正解か、わかったモンじゃねぇな。 捲し立てる(まくしたてる)かの様に吼えるその口振りは、往年の勝新太郎に何処か似ている。多分、父親が好きだったんだろう、その影響が刷り込まれていた。
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