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本日のお客様 就活生 鴫凪真紀
ここは喫茶Café Jorge
このお店には、いつも誰かが集まっている。
駅から続く幹線道路は車の往来が激しく、行き交う人々は世間のせわしなさに追われているようだ。
しかし、一本横道に入れば街は落ち着きを取り戻し、時間の流れを忘れて、自分の歩みや他人の足取りにも目を向ける余裕が生まれる。
そんな通りとどこかへ続く裏通りが交差する角地に、その喫茶店はひっそりと立っていた。
濃い色の木目調で統一された店内に、慌ただしい日常から取り残されたかのようにレトロな雰囲気を残しながら、『Café Jorge』は今日も営業している。
ここに訪れるのは学生からお年寄りまで、客層に垣根はない。
今日はどんなお客様がいらっしゃるのか……
──カランッ。
ベルの音とともに扉が開くと、マスター・ジョージが寡黙だが温かい雰囲気で迎えてくれる。
その隣に立つのは、今日のシフトを務める長谷川眞梨明。
彼女は長い手足を投げ出して、店のカウンターで力尽きていた。
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