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「どうしたのムジツさん」
生物部の部室に戻ってきた瓜生田は、泥で汚れた牟児津が背中を丸めているのを見つけた。どうやら川路はまだ戻ってきていないらしい。
「こけた……」
「転んじゃったんだ。怪我とかしてない?」
「だいじょぶ……」
「そっかあ。シミになるから、帰ったらちゃんと石鹸で洗うんだよ」
「うん。そうする……」
「ずっとひとりでここにいたのか?」
「なんか、途中で八知先生が来たけどまたどっか行った」
ひとりで心細かったせいか、はたまた転んだことの恥ずかしさからか、牟児津はすっかりしょぼくれていた。瓜生田は牟児津を抱えて立たせ、大眉の方を向いて言った。
「じゃあ、大飼育舎に行きましょう。みんなたぶんそこにいます」
「分かるのか?」
「さっき小飼育舎からケージを運び出していたので。誘拐があったから場所を移すんじゃないですか?」
「なるほどな」
「ほら、ムジツさんもしっかりして。ぐずぐずしてたらあんワッフル売り切れちゃうよ」
「それはやだ〜〜〜!」
テンションが下がりきった牟児津をなんとか奮い立たせ、すっかり呆れている大眉を促し、瓜生田は2人を引き連れて大飼育舎へ向かった。最年少の瓜生田が指揮を執っていることについて、牟児津も大眉も特に疑問を持たず、諾々と従った。
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