失恋タル 第4話

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約束の時間より5分早くマンションに到着。 迷ったけれど2501の後、通話ボタンを押す。 中へ入る自動ドアが開き、エレベーターで部屋へ到着。 扉を開けて出て来たのはエメラルドグリーンの瞳にブロンドの髪を持つ中学生くらいの。 「初めまして。タクミです」 「お入り下さい」 通された部屋はすべてが白一色。 床も壁も天井もブラインドも照明器具も家具も何もかもだ。 目が眩みそうになる。 20畳程の広い部屋の一角には白いソファーと白いテーブル、反対側には白い食卓テーブルと白い椅子が置かれている。 その他にあるモノは、白い電子ピアノと白い空気清浄機。 まるでモデルハウスのように、余計なモノは何もない。 「好きな椅子におかけ下さい」 俺は食卓テーブルの椅子に腰掛けた。 「モニカを連れて来ます」 少年はそう言った。 彼が来たのは腕時計。 「腕につけて下さい。モニカは、僕の母です。僕が物心ついた時から、このカタチです。僕の大切な、家族です。見かけは腕時計ですが、心は人間です。よろしくお願いします」 「いいのか? そんな大切な存在を初対面の俺が腕につけても?」 俺は不安に思った。    少年は無言で、その腕時計を俺の左手首に装着した。 すると、おそらく骨伝導で腕時計は俺にこう語りかけてきた。 『驚かせて、ごめんなさい。モニカです。とりあえず出かけましょう。詳しいことは歩きながら話します』 モニカが、そう言うので、俺は腕時計を覗き込んで 「それじゃ、出かけましょうか」 と囁いた。 「よろしくお願いします」 少年は心配そうにモニカを見つめている。 「任せろ。俺は命に誓ってモニカさんを大切にする。早目に戻るよ」 少年は潤んだ瞳で、俺の目を真っ直ぐに見つめた。 俺は彼の両肩に手を置き、手のひらの体温と指先の力で、しっかり自分の気持ちを伝えた。 「僕はジャッド。何かあったらすぐ電話して。初めに電話した番号。わかるだろ?」 「ああ。偉いなジャッド。君は頼もしい」 ジャッドか。 フランス語で翡翠を意味する。 彼の瞳の色だ。
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