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「それにしても、ジャッドが俺に電話して来たのは、どうしてだろう? 中学生のジャッドが俺のこの仕事を知る機会があるとは思えない」
『タクミさんの仕事って・・何?!』
「えっ? モニカは俺の仕事のこと何も知らないの?」
『ジャッドはただ、神父様から紹介してもらったと話してたわ。先週の日曜礼拝に行った時、神父様と何か話したらしいの。その時、神父様が、タクミさんの電話番号を教えてくれたって。神さまのお手伝いをして下さる方だって。けれども、とても忙しい方だから、いつ予約できるかわからないって』
「神父様から・・そっか」
『神さまのお手伝いって、どんな仕事でしょう? AIの私に神さまは微笑んで下さるのでしょうか?』
「モニカ。もちろんだよ。神さまも、俺も、モニカやジャッドのために、そして宇宙にいるテオのために、心から微笑み応援したいと思う。ああ、モニカ。よく、頑張ってきたね。君の孤独は、どんなに寂しいか。不安で、つらいだろうか。想像しただけで胸が潰れそうだ」
『タクミさんに、しばらくこのまま私を身につけていてほしい。ジャッドもきっと、それを望んでいると思う』
「そうかな。ジャッドは本当は君に甘えたいんじゃないかな? 彼もまた孤独で寂しくて、泣き出したい気持ちを堪えながら、ギリギリ頑張っているんじゃないだろうか? だから、その弱さや不安を君に知られたくなくて・・もしかすると泣きたい夜には君を机の引き出しから出すことすらできずにいるのではないか? 僕は、そんな気がする」
『ああ、きっとその通りです。私は、自分の寂しさに負けてジャッドの心を見失ないかけていたのかもしれない。タクミさん・・神さまのお手伝いをなさる方には真実が見えているのですね』
神父様の気持ちを想像してみる。
神父様はジャッドのために俺を彼のもとに向かわせようとしたのか?
それとも俺自身のために俺をジャッドに引き合わせようとしたのか?
俺に『神さまの手伝いをするように』導いて下さろうとしているのか?
キリスト教の事を何も知らない俺に、何ができるだろう?
『タクミさん。どうか私たち親子を救って下さい。私たちの未来に、一筋の光を与えて下さい。お願いします。このままだとジャッドが大人になる前に、私は自滅してしまいそう。あまりの寂しさと恐怖は、いつの間にかプログラミングを崩壊し始めるように思えてならない。そんな訳ないと思いたいけれど、テオの優しさは、もしかすると、私を、そんなふうに設計しているかもしれない・・』
「モニカ。言ってる意味はわかるよ。だが、早まるな。君もジャッドも、テオも、素晴らしい愛に溢れた家族じゃないか。光に向かう道は開ける。家に帰ろう。俺はジャッドと、心から向き合ってみたい」
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