08 夢の話

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 天野と岡本が頷いていた。二人も同じだったのか。そこで私はほっと一息ついて説明を続ける。 「それから二人には会おうとしたのよ。だけどよく考えたらしょっちゅう顔を合わせる事ってないのね私達。それを考えていたら、もしかすると慰安旅行の前の方がよく会えていた様に思えて、もしかしたら私が避けられているのかもって思う様になって。だから二人は私があんな事する女だと分かって呆れかえって距離を置く様になったのだとばかり思う様になって」 「そんなわけないだろ。わざわざ俺は企画部のフロアにも行ったんだぞ」 「そうですよ、僕と天野さん二人で何気に仕事の振りして行ったのに、ことごとくすれ違いで」  天野と岡本が私の肩を叩きながら必死に話す。 「そうだったの。全然気がつかなかった」  となると── 「「「本当にすれ違い?!」」」  三人が同じ言葉を口にして一緒にソファの背もたれに倒れ込む。 「はぁ~マジかよそんな事で、二、三週間振り回されていたのか俺達」  天野が信じられないと天井に向かって呟く。 「特に今週一週間なんてもう地獄ですよね」  岡本も天井に向かってポツリと呟いた。 「だってこんな男性二人に同時に抱かれる女なんて。普通に考えたらおかしいものね。きっと嫌だと思って」  私は正直に思っている事を話した。  すると天野がソファに背を預けたまま呟く。 「俺が好きで抱いたんだ。複数でやったからってそんな気にする必要はないぜ。俺は倉田と岡本ならいい」 「あ……」  私が一番気にしていた事を天野はスルリと返事をしてくれた。 「そうですよ。僕も同じです。他と比べる必要ないですよ。僕らが普通じゃないのなら、普通じゃないのでしょう。でもそれでいいんですよ」 「……うん」  岡本も簡単に答えてくれた。  二人共何の迷いもない。私は心から安心して溜め息をついた。 「それならよかった……」  しかし、そんな私の呟きには天野は納得がいかなかった様だ。  まだ脱力したまま天井を見つめ不満を述べる。 「三人でっていうのは気にしなくていいと思うけどさ。そもそも『よかった』じゃねぇよ。俺は人生初めてだ。同じ女……倉田と夢の中で何度も繰り返し思い出のエッチするのなんて」 「────え」  ボンヤリしながら呟く割りにかなり過激な天野の言葉に、私はタップリ間を開けてから声を上げてしまう。
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