08 夢の話

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「俺達が寝たのってあの慰安旅行の一夜。しかも一人一回だろ? だからさ情報が少なすぎて、壊れたテープみたいに慰安旅行の一夜を何度も夢に見てさ。夢の中で達する事が出来るから気持ちいいのは確かなんだけれども。朝起きたらもうギンギンでどうしようもなくって。俺なんて三日に一回は毎朝自分で抜いて出社だぜ? 信じられない。中学生でもなかったわこんなの」  天野はそう言いながら上を向く自分の顔を両手で覆った。 「そ、そうだったんだ」  天野も私と同じ様に夢を見ていたのか。自分と同じ思いでいたのかと思うと少し嬉しい。  嬉しいっていうのも変な表現ね。私は小さく肩をすくめた。  すると岡本も天野の話を受けて、天井を仰ぎながら呟く。 「夢の中で思い出しながら倉田さんを抱けたならいいじゃないですか。夢の中で達するならまだマシですよ。僕なんて慰安旅行の夢を見るんですけれども、天野さんのところで終わるんですよ……最悪です」  岡本はクルリと首を横に向けて天野を怨めしそうに見る。 「岡本も同じ夢を見たか。そういえば俺が先にしたもんな、そこで目が覚めるのか。ハハ、最悪だな。じゃぁ夢の中でも出来ず目が覚めるのか」  天野は顔を覆ったまま、軽く笑っていた。 「そうですよ。仕事も忙しくて家に帰っても出来る時間もありませんでしたから。シャワーを浴びるも眠くなるんですよ。おかげで自分を慰める時間もろくすっぽ取れなくて。そんな状態で、連続一週間生殺しの夢を見たらどうなると思います?」  口を尖らせて呟く岡本が幼く見えて可愛い。可愛いけれど話す内容は過激だ。 「精神不安定になるわな」  天野が応えると間髪入れず岡本が答えた。 「違いますよ。夢精ですよ夢精。朝起きたら大惨事ですよ」  岡本が溜め息交じりに呟いた。  夢精。一般的には思春期に多く見られるって聞いたけれども。大人でもあるのね。  私は頭の上で飛び交う会話を聞きながら頷いていた。   「へぇ。そりゃ大変だったなぁ…………え、夢精?!」  最初は流れで共感していた天野だが、最後タップリ間を開け驚いて身を起こす。  天野は目を丸めて岡本を見つめる。心なしかプルプル口の端が震えている。  岡本が淡々と話しはじめる。 「そうですよ。二週間連続で起こったんです。僕も驚きました。おびただしい量ですし」 
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