佳太 25

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佳太 25

いよいよ彼女が 引っ越してくる日が来た。 毎日連絡を取り合って、僕も部屋作りをして 忙しいけど、仕事にも張りが出るのか そちらも上手く行っていた。 残業を減らせる様、効率よくする。  上司からも、最近の働きぶりは 素晴らしいと評価してもらえた。 全て、リコのおかげだ。 チョビがいるから、新幹線より車が良いだろうと、名古屋から夜中の高速を飛ばした。 いや、安全運転だけどね。 だってこれから2人の生活が始まるんだ。 事故なんて、絶対起こせない。 首都高を過ぎて見慣れた景色も、こんなに鮮やかだ。僕の晴れ男ぶりは我ながらいい感じだな。 日が昇り、少し朝日が眩しくなった頃 懐かしいマンションに到着した。 大きめの家具などは業者に頼んだので 既にマンション前にトラックが停車している。 エントランスに、リコの姿を見つけた。 「リコ!」 声に振り向く彼女の顔に 僕の心は、胸いっぱいになる。 「おはよう!」 リコが駆けてくる。大きく手を広げて迎える僕の胸に、飛び込む彼女をしっかりと抱きしめた。 「大丈夫?疲れてない?」 心配そうな顔で僕を見上げて話しかける声も 耳に心地よい。 「ぜーんぜん大丈夫。 リコこそ、準備で疲れてない?」 「私は大丈夫。ケイに会えると思うと 無敵になれるもん」 2人で大笑いしながら、部屋に向かった。 細々したものを、僕の車に積み込んで 昼前には全て積み終えた。 見送りに出てきてくれた 奏たちファミリー。 アキ姉も、家族で来てくれた。 陸くんがちょっと、大人っぽくなっていたのは お兄ちゃんになる自覚もあるのかな? 画用紙に描いた僕とリコの絵は あたたかい色使い。 幸せを現しているよな。 大地さんが、車の中で飲んでとお茶とお菓子。 歌織ちゃんが、お弁当まで作ってくれた。 リコとチョビを車に乗せて、ドアを閉める。 僕は運転席に乗り込み窓を開けて、みんなに 挨拶する。 音ちゃんがぐずりもせず ご機嫌な顔で、奏に抱かれている。 みんなの優しさと愛は、本当に僕らのこれからを祝福してくれている。 「また、落ち着いたらゆっくり来るから。 アキ姉の無事出産も祈ってるから」 エンジンをかけて出発した。 バックミラーの手を振るみんなと ルームミラーにうつるリコの顔を見ながら 新しい物語のスタート。 僕は、ハンドルを握り直した。
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