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次の日
「怜、起きて」
誰かが俺の名前を呼んでる··········。
「 ん、 」
目を開けると整った顔がドアップで映り、
「うわ"ぁ?!?」と思わず大声を出して驚く。
しかし、その際誤って体勢を崩してしまいベッドから落ちて、ドスンッ!という大きい音が部屋に響いた。
「 ····················いっってぇー···」
朝から災難だ、、、
お尻をぶつけて、それを擦りながら起き上がる。
「ははははっ、面白い」
俺を見てその人物は大笑いだ。
「けーさん、笑わないでくださいよ」と、先輩を睨みながら言う。
「だって、なぁ·····」
先輩は、ごめん、ごめんと言ってはいるがまだ笑っていてそれがムカつく。
(そこは、大丈夫か?と心配する所だっ!)
「もういいです」
俺は完全に拗ねてベッドに横になっている先輩を無視し、チェックアウトの準備を開始する。
今日は一限があって、二限は取ってないから休憩スペースで過ごして·····三限からは全部だな、、、
家に帰ったら教科書リュックにいれないと·····
それから──────····
大学の事を考えながら服を着替えていると、
「れ〜い♡」と、先輩が甘い声で名前を呼んで後ろから抱き締めてくる。
「何ですか?」と、さっきの事をまだ拗ねている俺は少し冷たい反応で返す。
「まだ拗ねてる?」
「そーですね。性格が良い人のおかげで。明日以降尻に痣が出来たら恨みますから」
先輩の事を気にせず俺は抱きつかれたままリュックの方へ向かう。
「ごめん、恨まないでよ。何したら機嫌直してくれる?」
肩に頭をのせて先輩が聞いてきた。
何したら·····か、、、、
別にそこまで求めて無かったけどな···。
起こし方はどーであれ、落ちたのは自分の不注意な訳で、拗ねたのは先輩が笑ったからだ。
····················少し考えて、
「 ! じゃあ、俺小倉トーストが食べたいです」
何故か小倉トーストが思い付いた。
「小倉トーストで機嫌直るの?」と、先輩が不思議そうに尋ねてくる。
「はい、今凄く食べたいので。なので·····けーさんっモーニング連れてってください♪♪」
「分かった。それで怜の機嫌が直るなら喜んで」
抱き締めるのを辞めた先輩は、すぐ支度する···と言うと頬にキスをして洗面台へ歩いて行く。
「 ぁ·····朝から甘い、」
キスされた頬を抑えながら俺は独り言を言う。
◇┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◇
七時というかなり早い時間にチェックアウトして俺と先輩は高級車に乗り、現在俺の住むアパートに向かっている。
チェックアウトの際、フロントで「バイキング形式のモーニングを行っておりますがいかがですか?」と言われたが、小倉トーストはないとの事でお断りした。
「俺、小倉トーストはモーニングとして何処でもあると思ってました」
助手席に座りながら先輩に話し掛ける。
「何処でもって·····ない所は無いと思うぞ」と俺の言葉に先輩は笑う。
「そーなんですか?てっきり···全国何処のホテルや喫茶店に行ってもあると思ってました」
本気で俺はそう思っていた。
「くくくくっ··········なにそれ···どんだけ怜の中では小倉トーストの存在強いの?」
ヤバいな···笑い過ぎて事故りそう、と先輩は言う。
そんな笑う事無いだろ··········。
「すみませんね、どーせ俺はあまり遠出しませんし、けーさんみたいに知識豊富じゃありませんよー」
先輩に再会してから拗ねてばかりな気がする·····俺は拗ねながら外を見ていた。
「ごめん、ごめん。いや、怜はそのままで良い。俺の周りにはそーいうの居ないから·····癒されるよ」
·····癒されるって何?!
「···············貶されてるのか褒められてるのかビミョーですね、」
「ははっ、褒めてるんだよ。あ!モーニングするお店探しておいて、、信号とかで止まってる時でいいから」
「分かりました」
俺は外を見るのを辞めて携帯を取り出すと先輩とモーニングするお店を調べ始める。
「 それ大丈夫?」
止まって無い状態の車の中で俺が携帯の文字を読んでいたので、酔わないか先輩が尋ねてきた。
「はい、今の所大丈夫です。吐かない程度で調べるんで」と、携帯で調べながら返す。
あまり車に乗る機会は無かったけど、少しの文字なら読んでても気持ち悪くならなくて助かった。
それに、調べてみると·····結構色んなお店がモーニングをやっている。
中にはパンがキューブ型だったり、朝から蕎麦やうどんの付いたモーニングやバイキング方式のモーニングまで·····本当に色々だ。
でも俺は小倉トーストが無性に食べたいっ!
量があり過ぎず、調度良い量で小倉トーストのモーニングがあるお店を探していく、、、、
「あっ」
画面をスクロールしている時、一つのお店の紹介ページで止まった。
「あった?」
先輩は運転しながら尋ねてくる。
「はい、ありました。俺の大学から近いですけど·····けーさんは大学間に合います?」
先輩も大学二年生で必須科目は必ず存在するから、モーニングで遅刻させる訳にはいかない。
「俺、今日は三限目からだから」
「そーですか、良かったです」
先輩の言葉に俺は胸を撫で下ろす。
「怜は一限から?」
「はい、二限は無いんですが三限からラストまでです·····」と、げんなりしながら言う。
授業のラストはいつも外が暗いせいか···疲れて眠気と戦ってる·····まぁ、慎二みたいに寝ては無いけど、、、
「そっか、なら今後は土日とお互いの授業が早めに終わる曜日に会おうか」と先輩が提案してきた。
俺としてもその提案は大変助かるので「そうしましょうか」と了承する。
細かい事はモーニングを食べながら決めようという事に。
三十分後、、、
一人暮らしをしているアパートに到着し、先輩に「少し待ってて下さい」と伝えて自分の家に入る。
あ〜やっぱり自分の家は安心するなぁ♪♪
俺は大学生になるのと同時に一人暮らしを始めた。
最初は両親に猛反対されて駄目だった·····。
Ωの一人暮らしは危なすぎる、と。
俺は両親の言葉に対して··········こんな出来損ないのΩなんか誰が抱くんだよ、こんな汚い俺なんかっ!!と、内心思ったが結局親には言えず、防犯設備が多少あるマンションやアパートを探して見付けたのが此処だった。
靴を脱いで1DKの部屋に行くと、昨日の朝出掛けたままの状態で外には洗濯物が風で揺れている。
「ヤバい·····洗濯物干しっぱなし、、」
慌ててベランダに出ると昨日干した洗濯物を入れた。
昨日、雨が降ってなくて本当に良かった···と思う。
家の中に洗濯物を入れ終わると窓を閉めてカーテンを閉め、次は今日の授業の教科書をリュックに入れていくが、、、、
「 あっ、! そうだ 」
現在着ている服が昨日のままだった事に気付く。
流石に二日続けて同じ服は怪しまれるので、
授業の準備を終えた後、適当に服を選んで着替えた。
ここまでの作業で十五分は掛かってしまい、俺は準備を全て終えると先輩が待つ車へ急いで向かう。
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