変化

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変化

大学の駐車場に車が止まる。 「また連絡する」 先輩はそう言うと軽くキスをしてきた。 俺は「分かりました、」と返事を返したが、キス一つで顔が熱い·····。 (ほんと慣れなくて困る、、、) 車を降りる時、忘れない様に首輪を外してリュックに入れると「送迎ありがとうございます、けーさんも大学頑張ってください」と言ってドアを閉めた。 先輩が乗る車を見送った後、俺は大学の門から入り一限目の教室へ向かう。 ◇┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◇ 「あれ?怜·····首ど〜したの?」 一限目が終わり、四人で休憩スペースに向かっている時、久坂が自身の首を指差しながら俺に尋ねてきた。「首??」と、俺は疑問で返す。 久坂の言葉で慎二と鳥部も俺の首を見るが、 「ホントだな、ぶつけたか〜?引っ掻きすぎた·····いや蚊にでも刺されたか?」と慎二は言い、鳥部は黙って見てくる··········。 そーいえば、鳥部は朝から顔色が悪い気がする。 本人は大丈夫だと言ってたけど、、、 「右のここら辺が赤くなってるから」 久坂の発言に俺は驚き「 ぇ、」と、目が見開く。 (まさか··········) 嫌な予感がして右の首元を手で隠し「トイレで見てくる。先、休憩スペース行ってて」と三人に伝えて急いでトイレに向かう。 「······························うわぁ·····マジだ、、」 トイレの鏡で右の首を見ると赤くて細長い痣?ぽいのが付いていた。 「見える所はやめて、って言ったのに·····」 直ぐに本人へSNSか電話で文句を言おうか考えたが、コレについては直接文句を言う事にする。 「まったく、、また揶揄う為にワザと付けたな」 取り敢えず、周りに聞かれたら蚊に刺されて肌を擦り過ぎた·····とでも言っておこう。 (それにしても·····キスマークってこんな風なんだ) 鏡に近付けて痕を見ていると、、、 「怜」 聞き覚えのある声に呼ばれて、鏡から視界を変える。 入口近くには鳥部が立っていた。 (鳥部?) いつから立っていたか分からないが·····Ωだとバレる様な発言はしていないから大丈夫だろう。 「なに?、っというか体調大丈夫か?」 さっきより体調が悪そうで、息も荒い気がする·····。これは帰らせた方が良いな。 「·····それ、 誰に付けられたの?」と、何処か不機嫌そうに尋ねられ、体調の事には返答が無かった。 鳥部の言葉に内心動揺しつつも「誰?って、蚊に刺されて擦り過ぎただけだよ」と返しつつ、 「鳥部、マジで今日は帰った方が良い」と付け加える。 「大丈夫···だ。か·····ちょっと見せて」 なんで?と思いつつ、これで見せないと不審に思われると考えた俺は鳥部に近付く。 「ほら、別に大したこと無さそーだろ」 こんな事早く終わらせて、慎二達にも鳥部に帰る様に説得してもらわないと、、、 それに········今はトイレに一応Ωの俺と‪α‬の鳥部二人しかいない。 何か問題が起きたらお互い最悪だ。 「早く慎二達のとこ行こ?」 鳥部の横を通り過ぎようとしたが、突然·····腕を強く掴まれ個室に連れて行かれると壁に両腕を押し付けられた。 「〜〜〜〜〜っ、と、鳥部·····?」 両腕が拘束されて動けず、声が震えてしまう。 「······························。」 鳥部は黙ったまま俺の首元に顔を近付けると、 「 ·····臭い、、 やっぱり Ωか」と、呟く。 「⎯⎯⎯⎯⎯⎯···ッ?!」 (臭いで分かるもんなのか?いや、それよりもバレた·······違う····バレてた··············) 心臓がどんどん脈を打つのが早くなり、冷や汗が溢れてくる。 「 ··········Ωだから、、何?離して」 怖い、という感情を押し殺して鳥部に離す様に言う。 しかし、鳥部は離すどころか先輩のキスマークが付いていた所を強く噛んできた。 「〜〜〜〜〜い”っ·····たいッッ!離せッ!離せよ!!」 抵抗しようと頭を左右に振る。 噛んでいた口は離れるが次は左肩を噛まれ、先程よりも強く噛まれているのか·····痛みが増す。 その間も痛みに耐えながら俺は離れようとするが·····駄目だ、なかなか逃れられない。 (怖い··········痛い···痛い·····怖い····嫌だッ) 暴れていると右手に貼っていたガーゼが剥がれ、先輩が数年前に付けた歯型が顕になる。 鳥部はそれを見て驚いた表情を浮かべていたが、 「怜·····相手は誰?この前会ったっていう高校の頃の先輩?」と、冷たい声で聞いてきたので、 「と···鳥部には·····関係···ない···だろ、、」と睨みつける。 俺の答えを聞いた鳥部は右手に顔を近付けて「この‪α‬は·····独占欲の塊だな、」とだけ言うと、口を開けて右手の甲に噛み付こうとした。 (⎯⎯⎯⎯⎯⎯·····ッ、) 「それに触るな"ァッ!!!」 手加減無しの蹴りを鳥部の腹に入れると両手を拘束された手は緩み、俺は個室のドアを開けてトイレから逃げる様に出て行く。 「 くそ 、 、、」 (···いってぇ··········) 噛まれた首元を手で抑えながら人気が無さそうな場所へ走った。 「ここなら·····大丈夫、か?」 扉の前で周りを確認すると廊下には誰もおらず、俺は直ぐに扉を開けて中に入り内側から鍵をかける。 「 ふぅ、、」 この部屋は倉庫で、普段は美術部が使用しており絵や道具などが沢山置いてあるがそれ以外は何も無い。 (少し···埃っぽいけど、しょうがないな) 安心した俺は陽が入って明るい窓際に近付くと床に座る。 「···············よかったぁ〜···」 噛まれたのは左の肩と首元だ。 まぁ····番になるにはヒート中に噛まないといけないんだけどさ。 (先輩と再会してから色々変化したなぁ) ‪リュックからハンカチを取り出して噛まれた箇所を拭く。 ハンカチに血が付いたって事は、二箇所とも痕が数日は残るだろう。。。 先輩にも当然これは見られるだろーな····駄目だ、溜め息しかでない。 痕を見て、なんて·····思われるんだろ? 説明しても信じてくれなかったら·····?? 「···············考えても···仕方が無い···よな。後でそこのトイレで洗おう」 (ほんと···仮にも先輩の番なのに何やってんだろ、、) それに、鳥部にはΩだってバレていた··········。 【臭い】って言ってたな、、、 ‪α‬は臭いで分かるもんなのか? なら、他の‪α‬にもバレてる筈だ。 でも··········外で聞かれた事も気にされた事も無い。 何で今回に限って?? あと、鳥部は何でいきなり噛んできたんだ? ラットでは·····ない、、、筈だ。 俺はヒート中じゃ無かったし久坂も違った。 Ωの俺達にあてられた感じでは無さそうだけど⎯⎯⎯·····先輩に会った時にでもラットについて聞いてみよう。 ‪α‬の事は‪α‬のが一番よく分かる事だし、、、、 「···はぁ··········」 考える事が沢山あり過ぎて頭がパンクしそうだ。 両手で頭をグシャグシャに掻いていた時、 ふと···右手の先輩に付けられた噛み跡が目に入る。 「 先輩·····」 本当は今すぐにでも相談したい。 話しがしたい···声が聞きたい、大丈夫だと言って欲しい。 (今は何してるんだろ) 確か、授業三限目からって言ってた。 「···································。」 大学の準備とか忙しいのは分かってる·········· 分かってはいるけど、、、 それでも先輩へ『声が聞きたいです』と、俺はメッセージを送ってしまう。 「どうせ·····返ってこないのに、、何やってんだろ··········」 自分自身の行動に呆れた。
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