魔女狩り

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魔女狩り

慎二に電話を掛けると直ぐにでた。 《怜?!お前今何処にいんだよッ》 初めて聞く慎二の焦った声·····。 《いや、違う今はそんな事言ってる場合じゃない、鳥部が大変なんだ》 「分かってる。今何処?」 慎二達の所に向かう前にラット抑制剤があると思われる保健センターへ向かう。 《二階の男子トイレだ》 「分かった、鳥部を絶対にそこから出さないでくれ。俺は抑制剤貰ってから向かう」 分かった、と慎二が言い電話を切った。 四階から一階へ降り保健センターへ向かって全力で走る。自身が在学するこの大学は色んな棟があるが、先程まで居た棟からは保健センターへ歩いて10分掛かる。 (今は、慎二が鳥部を止めていてくれる事を祈るしか無い) 息を切らしながら保健センターの中へ入り、近くにいた職員へ「 ·····げほっ 、 すみません!!ラット抑制剤が今直ぐ必要でッ、ごほっ、、 ‪α‬の友達が第一棟でラットになってしまって·····」と話す。 話を聞いた職員は「わかりました、場所は何処ですか?」と尋ねられたので、俺は慎二達がいる男子トイレを説明する。すると、直ぐに他の職員にも声を掛けてくれて急いで向かってくれた。 (·····俺も、、行かないとッ、) 久しぶりに全力で走ったせいか足に上手く力が入らない··········。でも、鳥部達が心配だ。 フラフラの足で慎二達がいる男子トイレへ向かおうと歩き始めたが「貴方はΩ?」と別の職員に尋ねられる。 此処で嘘を付いても後でろくな事にならないので「はい」と頷く。 「ラットになった‪α‬の近くは危ないわ」 「でも、、友達が心配で·····近くにもう一人Ωの友達がいるんです」 早く行きたい···此処で話してる場合じゃないッ!! 俺は久坂が心配でしょうがない。 「‪α‬の子とΩの子は此方で対応するので貴方は通常通り授業に戻りなさい、いいですね?」 「そ、れは·····っ」 友達の事が心配なのに、職員はこんな状態でも授業を受けさせようとしてくる。 (まともに授業聞ける訳ないだろ····) でも、、、 Ωの自分が行ったら余計に騒ぎになるかもしれない。 「 ···············ッ、はぃ···」 複雑な気持ちのまま俺は返事を返して保健センターを後にした。 携帯を見ると慎二から電話が何回か来ていたので、そっちに行けない事を伝えようと折り返す。 《怜??今どこだ?》 慎二は直ぐに電話に出た。 「ごめん、まだ保健センターの前。保健センターの人をそっちに向かわせたけど、慎二達は大丈夫?」 《鳥部は今抑制剤打たれて、久坂は ··· ·····、 ·····れた》 久坂の部分が声が小さくて聞き取れない。 「え?慎二、久坂はどーしたんだ?声が小さいから聞こえなかった」 聞き返してるだけなのに·····不安で心臓を打つ脈が速い、、、眉間にも皺が寄ってしまう。 《久坂は·····》 「⎯⎯⎯⎯⎯⎯え? か、噛まれたって·····久坂はヒート状態なのか?なあ、大丈夫·····だよな??」 《·······················································。》 無言で何も言わない慎二、、、 俺は信じられなくて電話を切ると、授業を受ける様に言われたのに·····気付けば無我夢中で慎二達がいる男子トイレへ走っていた。 嘘だ···················· いやだ····· 慎二が誤解してるだけだろ?? アイツ、結構抜けてるし··········そうだろ?! 違うって、、違うって誰か言ってくれ!!! 誰でもいいからッ ◇┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◇ 「········································ッ、」 現場に着くと野次馬が沢山いて·····職員や先生が「関係無いなら戻りなさい!」と注意していた。 俺はその中を掻き分けて三人の姿を探す。 見つけた時、三人は男子トイレ前の廊下に居た。 鳥部は気絶しているのかタンカーで横になっていて、久坂は裸なのか·····職員が着ていた上着を羽織り、手当てを受けているようだ。 慎二は左頬にガーゼを貼った状態で立っている。 「 怜····· 、」 慎二は俺に気付くとこっちに近付いてきて「お前ッ!!こんな大変な時に何処行ってた?!?」と、勢いよく俺の胸ぐらを掴む。 「 ··········ごめん、」 俺はそれしか言えない····。 そんな俺達の様子を野次馬達は黙って見ている。 「首に首輪なんか着けやがって!!お前はβなんだろ?!なあ、違うのかよッ!!!」 痛々しい慎二の声に申し訳ない気持ちしかない俺は「·····慎二ごめん、、俺は···············Ωだ」と謝った。 慎二はそれでも胸ぐらを離さず、俺の身体を何度も何度も激しく揺らしながら「じゃあ、はお前の仕業なのか?」と、凄い形相で聞いてくる。 「はぁ?違うッ!!俺は⎯⎯⎯⎯⎯⎯····」 逆に鳥部に襲われかけて、と言いたかったのに、、、、 【俺、さっきアイツが此処から出て行くの見たぞ】 (えっ?) 野次馬の一人が俺を見たと言うと、 「私も廊下で見た!急いで走ってたけど」 「手で右の首抑えてたやつだよね?」 「そーそー、あのα‬に誘発剤使ったんじゃない?」 「誘発剤??マジ?」 「ほら、Ωの割には可愛くないから、あの‪α‬を無理矢理番にしたかったけど失敗した·····とか、」 「あの可愛いΩかわいそ〜」 「アイツβって嘘ついてたらしーぜ、怖いな」 (ちょ·····ちょっと、まって··········) ザワザワと騒ぎ、周りは俺を『犯人』にしようとしている。 「俺はそんな事して無いっ!!」 (な···なんだ·····これ、、なんなんだよッ) 「やってない証拠は〜?」と、俺を馬鹿にするように言う知らない人···············。 「 そ 、 そ ···そ れ は、、」 「Ωは馬鹿だから言葉がわかんないかぁ〜www」 「早く認めろよ〜」 「そーそー、早く謝ってぇ〜〜笑」 まるで··········魔女狩りにあっているみたいだ。 職員や先生は「やめなさいっ!!」と言ってるが、これは止むどころか酷くなっていく··········、、、 「お前って最低だな。今まで一緒にいたのが恥ずかしいぜ」 「違う!俺はそんな事してないっ!する訳ないだろッ!!」 俺の否定を周りは「嘘だなぁ」「うそうそ〜www」「うわっ、最低」と、嘘つき呼ばわり、、、 慎二も「友達だと思ってたのに·····嘘までつくのかよッ」と言ってくる。 「〜〜〜〜〜〜ッ、」 犯人にされそうな今·····何を言っても無駄だと思った俺は、逃げる為に慎二の手を胸ぐらから離そうと足掻くが慎二の方が力が強くて離せない。 その間も「出来損ないΩは退学しろっ」「ここはビッチがくるとこじゃねぇよwww」「大学から消えて〜」「この淫乱ッ!」「きーえーろ、きーえーろ♪」と、周りは嬉々として言う··········。 「ち·····違うッ!俺じゃ·····俺じゃないっ!」 確かに··········間に合わなかった。 でも、俺も襲われかけたし···それでも二人を助けたくて保健センターまで必死に走った。 なのに·····これは···これはあんまりじゃないかッ!!! 周りの人達が人間の皮を被ったバケモノに見えてくる。 ( ···怖い········こわぃ···ッ、逃げたい···やだ·····) 俺は怖くなり、目には大量の涙が溜まって·····怒りより恐怖と悲しさの方が強く、声も震えてきて喉も乾いてきた。 ( 誰かお願い·····信じてッ、、お願い··お願いだから···助けて⎯⎯⎯⎯⎯⎯·····) 「····信じて···いやだ、、、やめて···っぅ·····、」 恐怖の限界で目から涙がボロボロと流れる。 「オイ、あのΩ泣いてるぞw」 「泣けば許されるとでも思ってんかなぁ〜??」 「早く退学しろよ。たーいーがーくーwww」 退学しろ、というコールの中、、、、 【 俺の番にβ共がいい度胸だな 】 怒りを孕んだ声と共に胸ぐらを掴んでいた手から解放されて俺はその人物の腕の中に護られる様に抱き締められる。
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