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風邪
「はっ·····くちゅ!」
(風邪引いたかな、、)
昨日、風呂場で抜いてる最中にやり過ぎて、そのまま気絶した。
なんか寒いな·····と目を覚ましたのが朝の4時50分だ。
今は三限目で昨日と差程変わらず俺の周りは隣以外空いている。まぁ·····その隣というのも昨日座った人だけど、、、
(何でわざわざ俺の隣に座るんだ?)
窓際じゃ無くても黒板が見えやすい所はポツポツ空いてるのに。
「······························。」
··········今日も、久坂と鳥部は一限から居ない。
連絡を取ろうか悩んだが間に合わなかった俺に·····そんな資格さえあるのか、そもそも友達と言っていいのかさえ分からない。
慎二は·····他の奴とつるんでて、あれから関わってこない、、、、
大学に入学してからずっと一緒に行動していたメンバーが今はバラバラで···悲しいな。
先輩はというと、携帯にメッセージが三件来ていた。
一件目は、体調大丈夫か?無理させてごめん、
二件目は、暖かくして寝ろよ、おやすみ。
三件目は、おはよう。返事が無いが本当に大丈夫か?病院連れて行こうか。と言う内容で·····どれも俺を気遣ったものだ。
(普段は俺を揶揄う癖に、こーいう時は優しいもんなぁ·····俺ってチョロい、、)
勿論、これ以上迷惑をかける訳にはいかないので、
《おはようございます。すみません、爆睡してました。大丈夫です》とメッセージを返した。
「 ごほっ、、 ごほっ 、」
朝は寒気だけだったけど·····くしゃみや咳も出てきたから本格的にヤバいかも、、、
そういえば風邪引くのは久しぶり過ぎる。
(まさか、、自分があんな事になるとは思わなかったし··········)
今日の服装は一応マスクをして、先輩のキスマークと鳥部の噛み跡を隠す為に首輪をしている。
これに黒のサングラスしたら変質者の出来上がりだ。まあ、流石にサングラスはしないけど、、、
右手は傷が増えてしまい今日もガーゼを貼っているが、いつになったら噛み跡を隠せるテープを貼れるんだろ···············。
色々考えていると普段は長く感じていた授業はあっという間に終わり鐘がなる。
「なあなあ」と、隣の人が話し掛けてきたので、
「何? ·····げほっ、、」と、軽く咳込みつつ俺は次の授業がある教室へ向かう為リュックに荷物をしまっていく。
「大丈夫?めっちゃ咳してるから」
どうやら心配してくれてる様だ。
「大丈夫、ありがとう」
「無理しないよーにな。あのさ、、柊は···昨日騒ぎがあった時その場に居たΩなの?」
体調を心配してくれるから良い人だな、と思ってたのに·····質問する為の口実だったのかと思うと、自分の心が冷えていくのが分かる。
「···············だから何?そんな事を聞く為にわざわざ俺の隣に座ったんならもう関わってこないで」と、冷ややかに返す。
(···馬鹿馬鹿しい)
「ご···ごめん!違う、違うからッ。俺も···俺もΩだから詳しくは知らねーけど凄いなって」
「は??Ω?凄い?」
(意味が分からない)
さっさと立ち去ろうとしたが、自分と同じΩだという事と、言ってる意味が理解出来ず俺は立ち止まる。
「うん。ほらっ、これ」と項を見せてくる。
「···································。」
見せられた項には番がいるようで、歯型がくっきり付いていた。
(ほんとにΩなんだな、、)
それにしても、昨日の騒動で何が凄いんだ。
俺は友達二人を助ける事が出来なかったし、挙句·····野次馬や慎二に犯人にされかけた。
俺の事を無実だと証明してくれたのは·····先輩一人だけ··········。
あの時の事を思い出して下唇を強く噛んでしまう、、、
「それで、 ごほっ、、何が···凄いんだ?」
「そのっ·····俺の番が言ってた事で、違ったらごめんなんだケド、、、柊はあの二人を助ける為に保健センターに必死になって走ったんだろ?首も抑えてたって聞いたから、そのαに噛まれて襲われてたんじゃないかって··········。俺なら友達だとしてもそんな勇気は出ない」と、その人は俯きつつ話す。
「······························。」
でも、、、
必死になって走っても·····間に合わなかったら何の意味も無い!!!
俺の行動は無意味だった。
無駄だった。
何も凄くない···············。
喉まで出そうになったグチャグチャの感情を必死に押し込む。
何も知らないこの人に言っても意味は無いので、
「···ごほっ、 ごほっ、、·······ありがとう。それを言う為に隣に座ったのか?」と、尋ねる。
「それもあるけど、俺·····柊と仲良くなりたいなって···前から思ってて、、」
「え?俺と?」
「うん、昴流·····俺の番が前から柊はΩだって言ってたからさ」
(···············ぇ、)
この人の番も鼻が良かったのか····臭いで分かるαは少ないって先輩は言ってたのに、昨日に引き続き今日も·····ってなると意外と多いじゃないですかっ!?
これは今すぐにでも先輩に言ってやりたい。
内心驚きつつ「そうなんだ。気持ちは嬉しいけど··········今の俺とは····げほっ、か、関わらない方が良い····」とだけ伝えて俺は次の授業の教室へ向かう。
(咳が少し酷くなってきたかも)
でも、昨日休んだ授業もあるからこれ以上は休めない。俺は必死に勉強しないとβの学力にも追い付けないから、、、、
◇┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◇
なんとか今日の最後の授業である五限の授業に向う時、廊下で三人組の男達に道を塞がれる。
(ドラマとかの不良みたいだな)
俺がβのフリをしてた時は周りは興味を示さなかった癖に·····Ωだと分かった途端にこれか、、、
「 ゲホッ、ごほっ、、邪魔なんだけど」と、睨みながら三人に言う。
( 遅れる訳には行かないのに····· )
「ぶふぉwww Ωが勉強とかウケるw」
「勉強ってあっちのほーの勉強じゃねぇ〜の〜?」
「なあ俺達と遊ぼーぜ。昨日のαじゃ満足出来ねぇ〜からトイレから逃げたんだって??俺がひぃーひぃー言わせてやるよ」
(頭湧いてんのか·····コイツら、、)
「馬鹿らしい····ごほっ、、 げほ·····、、げほッ 」
相手にするのも嫌で俺は無理矢理その三人の横を通り過ぎようとするが壁に強く押し付けられ、衝撃で咳き込む。
「オイ!優しく言ってるうちに言う事きけや」
「ッ·····げほっ、 、ごほっ、ごほっゲホッぅエ"、ゲボっごほっ、ゴホッ 、、」
「なあ、こいつ·····なんかヤバくないか?」
俺を押さえつける奴に対して一人が声を掛けるが、俺は咳が止まらない。
(ヤバい、、かも···くる し ·····ッ)
寒くて寒くて堪らない。
これ·····熱一気に上がったかも····················。
抵抗出来ず意識が遠のきそうな時、、、
「怜ッ?!?お前ら何やってんだ!」
聞き覚えが声が耳に入り、咳で潤んだ目で声がした方を見る。
「···ゲホッ···ゴホッ····慎···二·····?」
慎二の大きな声に人が集まり、押さえつけられていた手が解かれた。
俺は床に膝を着いて咳き込み続け、三人は舌打ちするとその場を急いで去って行く。
(な、 で·····慎二が···)
咳き込む俺の傍に慎二が近寄ると背中を擦り、
「大丈夫か?··········って、うわ"っ すげぇ熱·····保健センター行こーぜ」と言う。
慎二の言葉に俺は首を左右に振り「····· 授業、、いく、」と必死に言葉を話す。
「駄目だろ、ほら行くぞ」
「だめ···、、おれ···ゲホッごほッ·······べんきょ し な、、と·····ごほっ、おい け··なぃ···ゲホッ···、····」
「は??馬鹿野郎ッ!勉強ならどーにかしてやる!!だから·····保健センター行くぞ」と、慎二におんぶされて保健センターに向かった。
(俺の·····事、、さけ て の、に·····)
昨日胸ぐら掴んで離さなかったくせに··········
隠してたのはわるいと思うけど、、信じてくれなかったくせに、、、、
保健センターに到着すると、処置室のベッドで横になり親の連絡先を尋ねられる。
俺は意識が朦朧としながら「 ···こ こ·····に、、」と、携帯画面を見せると意識を失った。
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