謝罪

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謝罪

歩きながら慎二について考えていた。 一昨日の事と今回の事で慎二に何て話しかけようか·····これからどう接していけばいいのか、俺自身がどうしたいのか、、、と。 一昨日は胸ぐらを掴まれて、逃げたくても逃げられなかったから本当に怖かったし、もう関わりたく無いとさえ思った。 昨日は、馬鹿な連中から助けてくれたし俺をおんぶして保健センターまで連れてってくれたんだよな、、、 嫌いだから関わりたくない········と、直ぐに切れたら楽なのに昨日の事と今まで一緒に過した時間で慎二の事を嫌いにはなれない。 だから、今日会った時·····自分の心のままに慎二との今後を決めるつもりだ。 「よし、」 慎二がいるかもしれない一限目の教室に行くと、見覚えのある二人を見て俺は慌ててその二人の元へ行く。 「久坂!鳥部!」 二人は俺の声で此方を見た。 「怜おはよう」 「おはよ〜、声どうしたの?」 一昨日の出来事が嘘とでも言わんばかりに普段通りだった·····。 「俺の事はどーでもいいっ!!ふ·····二人は大丈夫なのか?」 久坂は相変わらず首にチョーカーを付けて、鳥部は体調も良くなったのか顔色も良い。 俺の言葉に対し「あ〜大丈夫、大丈夫」と、久坂は笑い、「後で話すよ」と困った様な表情をして鳥部は言う。 「取り敢えず隣り座りなよ」 二人に言われて俺は隣りに座った。 (·····き、気まずい) あんな事があったせいか二人にどんな話題を振れば良いのか正直分からない。 下手なことは言えないし本当にどうしたものか·····。 「········································。」 周りの人間は·······鳥部と久坂の周りに座ろうとしない。だから席が変に空いてる状態で、一昨日も思ったけど別にお前らが被害にあった訳でも無いのに···って苛苛する。 「怜は首輪普通につけるよーになったんだね」と、久坂が俺の首を指差して話す。 「ぁ、うん。けーさんに着けるように言われて···」 「けーさん??」 「高校の頃の先輩」 今回の事があって先輩は自分と会う時以外も首輪を着けるという内容を契約書に追記し、俺も俺で大学側にはβとして申請していたのを昨日の午前中にΩでした、っと報告·····その際、あまり言いたくはなかったが高校の頃の事情を簡単に説明して今回だけはお咎め無しという判断がくだった。 (まだ慣れない首の重さが嬉しいのはおかしいけど、、、) 首輪に触れて口元が自然と緩む。 「ふーん、怜はその先輩が好きなんだね?」 久坂は茶化す様な素振りは無く、ストレートな質問を俺にぶつける。 (···好き··········うん。大好きだ) 俺は小さく頷き「高校の頃から初恋なんだ」と、返した。 「はぁ·····両思い、か」 鳥部は悔しそうに言い「この前は一生独身って言ってたのにね♪」と、久坂はニヤニヤしている。 「う"·····、で、、でも独身で終わると思う。俺の一方的な片思いだからっ」 リュックからノートや教科書、筆記用具を取り出しながら話す。 先輩はあの綺麗な女性が好きみたいだし、、、 俺は精々高校の頃の可愛い後輩って所だ。だから、鳥部の言う両思いは俺じゃ無い。 俺の発言を聞いた鳥部は「·····怜凄いな。そこまで鈍感でよく今まで噛まれずに生きてこれたな」と、嫌味では無く本当に驚いた表情をして言う。 「か·····噛まれずに、って·····まさか、けーさんの事言ってる?!」 「その先輩以外誰がいるんだ。そんなに痕をつけるαが怜を唯の後輩として見てるなんて有り得ない」 鳥部はそう言いながら頭を抑えている·····。 「えっ?!痕ぉ?項噛まれてるの??」 鳥部の言葉に久坂は反応して、隣の席に座る俺の所に来るとキョロキョロと色んな所を見てくる、、、 (何か·····恥ずかしい) 「違う。右手見たら分かるよ」と鳥部が言い、久坂は俺の右手を見て「でも、ガーゼしてるから怪我じゃないのー?」と鳥部に尋ね返す。 そのやり取りに、もう、いいや·····と半分開き直った俺は久坂に見える様に右手のガーゼを剥がした。 「はい、鳥部はこれの事言ってるんだ」 痕を見た久坂は「すっっごお〜〜いっ!え?!いつこんな痕付けられたの?」と興味津々だ。 しかし、その途中でチャイムが鳴り「あ"〜···怜、後で、絶っ対後で教えてね♡」と、とても残念そうに自分の席に戻る。 (あれ?チャイムなったけど·····慎二は?) 周りを見て慎二を探すと出入口の近くの席に座っていた。 あー多分·····チャイムぎりぎりに教室に入って座ったな、手でパタパタ扇いでるし、、、、 バカだなぁ、と慎二の行動を見て俺は小さく笑う。 (うん。またやり直せそーな気がする) 文句だけは後で沢山言って、謝ってきたら許そうと決めた。 慎二も俺に気付いたのか·····それとも隣に座る鳥部と久坂に気付いたのか、目を大きく見開いて驚くが口が開きっぱなしだ。 それを見て俺は思わず「ぶっ、」っと吹く。 鳥部と久坂は「怜?」と不思議そうに名前を呼んで、俺は俯きつつ「な、何でもない、、」と、笑うのを必死に耐える。。。 ◇┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◇ 一限目の授業が終わり慎二が「鳥部、久坂お前ら大丈夫なのか?!てか、怜は熱さがったのか?!」と慌ててやって来た。 「熱?!」 慎二の言葉を聞いた二人は俺の方を見る。 (言わずに終わらせよーと思ったのに、、) 「一応大丈夫」と、だけ答えて「それより、次のコマは皆授業無いから休憩スペースで話そう」と俺は話題を変えた。 休憩スペースでは俺の隣に久坂、向かいに慎二と鳥部が座り、あの出来事の事を四人でそれぞれ何があったのか話す。 鳥部は朝、満員電車に乗っていた時·····太腿にチクッとした痛みがあったらしい。ただ、その時はまさかラット誘発剤を打たれたとは思いもよらずそのまま大学に来た。 学校のトイレで鳥部はΩである俺を襲うが、俺が抵抗して失敗し、俺はそのまま逃走。 鳥部は体調の悪化も限界でそのまま座り込む。 その頃、久坂と慎二は休憩スペースで話してたが俺と鳥部の帰りが遅いのが気になり「トイレのついでに探すよー」と、久坂が言って慎二と別れ·····トイレでグッタリした鳥部を発見する。 久坂は「大丈夫?怜は?」と声を掛けた所、俺と同じ様に個室に無理矢理連れ込まれてしまい、抵抗したが結局·····行為をして項を噛まれた。 しかし、自身がヒート状態では無かった為【番】にはならずに済んだらしい。 その後も行為は続くが慎二が鳥部と久坂を発見し、慌てて久坂を鳥部から離そうとした所、鳥部に頬を殴られ慎二も鳥部の頬を思いっきり殴って引き離す事に成功した。鳥部は殴られて気絶。 その後、直ぐに俺が呼んだ保健センターの職員達が対応して··········俺の知っている出来事が起きた。 因みに、誘発剤を打ったあのβの男は恋人がいたらしいが、相手が鳥部に惚れてしまい直ぐに別れてしまった。そして、大切な彼女を奪われたと思った男は鳥部に一方的な恨みを持ち、今回の犯行にでたそうだ。 (逆恨みもいいところだ·····) 「怜、久坂、慎二·····本当にすまない」 鳥部は俺達に頭を下げ、 「俺も····怜にあんな事して本当にごめんッ!」と、続けて慎二も謝ってくる。 これじゃ謝罪会になりそうだ·····と思った俺は、久坂と目が合い「二人とも良いよ」と笑顔で話し、 久坂も「鳥部とヤレて気持ちよかったし、昨日散々土下座されたからもう·····たくさんっ」と笑って言った。
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