微糖

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微糖

慎二達と無事仲直りをした俺はトラブルも無く、平穏に過ごす。 先輩はというと一時間の内、一通以上のメッセージが来て·····授業が終わる度にそれを見る俺は過保護過ぎると引いていた。 鳥部は俺と先輩の事を両思いと言っていたが、先輩にはあの女性(ひと)がいる。 久坂や慎二に言っても「絶対違うと思う」と言われてしまいトドメは久坂から「その先輩可哀想だねぇ〜···」と溜め息をつかれながら言われた事だ、、、 (三人とも違うんだよ!俺は恋愛の好きでも·····先輩は違う、だ) 授業が全て終わる頃···外は陽が完全に沈み空は暗く、鳥部や久坂、慎二はサークルや用事、学園祭の準備で俺達は解散した。一人残った俺はというと休憩スペースで勉強の復習をしながら先輩の迎えを待っている。 最後の授業が終わって直ぐに〈俺、家に帰るのでそこで待ち合わせしませんか?〉と、先輩へメッセージを送信したが即却下。 何故ですか?と聞いても、危ないから····と言われ、大丈夫です!という言葉も信じて貰えなくて俺は絶賛拗ねている。 (確かに、ココ最近は迷惑かけてるけどさぁ) けど·····いきなりだ。 少なくとも先輩と再会する迄はβとして何の問題も無く過ごせていた。 「これは先輩がトラブルを持って来てるに違い無い··········絶対そう、」 ブツブツと独り言を呟きつつ、授業中に慌てて書いた沢山の文字を別のノートに綺麗に写していく、、、 実際遅れたのは約二日分の授業で休憩中は大学内で優秀と言われているαの鳥部に教わったが、 それでも·····細かい所は理解出来なかった。 休んでいても分かるって流石はαだと関心は出来たけど·····。 αやβならで、俺や他のΩの人にとっては二日はかなりの痛手だ。 ノートを見直しながら自分の中でしっくり来るように何度も考えて落とし込む、、、 「···············さむっ」 屋内にいるのに何故か足元が急に寒くなり、俺は周りを見る。どうやら他の学生が休憩スペースの出入口を開けて外に出て行く途中で「さみぃ〜」とか「やべぇなー」と話していた。 (何か温かい飲み物買おっかな) 持っていたシャーペンをノートの上に置いて近くの自販機へ行く。その自販機は十月だからなのか温かい飲み物と冷たい飲み物が半々で並んでおり、俺は温かい珈琲のボタンを押す。 珈琲を取り出して席に戻ると早速缶を空けて一口飲むが、、、 「 う"ぇ?!甘ぁ·····」 手に持っている缶を見ると【微糖】ってゴシック体で書いてある。 「しまった、」 基本、無糖だからかなり甘く感じて正直に言えば飲みたく無い。でも·····お金を払って買った物だから勿体無くて、眉間に皺が勝手に寄りつつも俺はその微糖を飲み続ける。 「······························。」 缶を持つ右手の甲を見て··········先輩との仮の番が終わったら俺はどーなるんだろ?と、いう考えがまた過ぎった。 無事に仮の番という契約が終わったら高校の頃の失恋も、今回の失恋もキレイさっぱり忘れて幸せになれるのか? また、忘れよう···忘れよう·····と必死になれば、その内本当に先輩の顔を忘れられるのだろうか··········? 「いや、今度は無理かもしれない」 だって、、、 初恋の人と偶然再会を果たし、人生で二度目のキスをした。その後も何度も何度も先輩とキスをして·····舌も入れられて、、、息が出来なくて窒息するんじゃないかって位求められた···············。 (そーいえば、あの時·····キスが好きか、とも聞かれたな) 今思い出すと凄く恥ずかしい。 それに·····一昨日俺と先輩は一線を超えてしまった。 再会してかなり早い段階で··········だ。 幾ら契約に入ってるからって、股が緩いΩだと思われてないか? 確かに高校の頃は水泳部のクソ野郎に脅迫されてヤッてはいたけど·····好きでヤッてた訳じゃない。 でも、呆れられてたら? 駄目だ、どんどん勝手に悪い方向へ暴走してしまいそうになる。。。 「···············本人に聞ければ楽なのに、、」 意気地無しの俺は本当に聞きたい事から逃げてばかりだ。 はぁ·····、と少し冷めた微糖の珈琲を一口飲んで落ち着こうとする。しかし、あの時の先輩とのセックスを思い出したせいでまた腹部が疼く·····。 (バカッ、一昨日それで先輩や周りに迷惑かけたばかりだろっ) 痛かった筈の行為が気持ち良くて·····脳がドロドロに溶けておかしくなってしまったのか、、まともな言葉が話せずに俺は喘いで·····先輩の背中に必死にしがみつき何度も快楽に溺れた。 先輩も先輩で「怜·····ッ、」と、荒い息を吐きながら何度も名前を呼んでくるし、、、 「···············あんな···っ、、切なそうに呼ぶなよ」 絶対に違うのに思わず錯覚してしまいそうになる。 行為中のあの熱を帯びた目と声·····触れられた指の感触が今も忘れられない。 それに、思い出したら何か恥ずかしくなってきた。 困ったな········本人が今こっちに向かって来てるのに、先輩の目を見て普段通り話せるか自信が無い。 グルグル余計な事ばかり考えていると、携帯が振動して慌てて携帯を手に持つ。 「あ、」 予想通りそれは先輩からの電話で、俺は落ち着こうと深呼吸を一回してから通話ボタンを押した。 「はい」 《怜?駐車場着いたから出て》 「分かりました」 電話に出て一分も経たないやり取りを終えるとノートや筆記用具をリュックに入れ、少しだけ残ってる珈琲を一気飲みする。 「あ"〜〜〜〜あ"ま"い··········」 次からは文字もちゃんと見よう。 席を立ち出入口に向かっている時、柱に貼ってある学園祭のポスターが目に付いた。 開催日は今から二週間後で学園祭の実行委員には鳥部が加わっている。 「再来週かぁ·····」 この大学に入って初めての学園祭だ。一応皆で回ろうとは前に話してたけど·····どうなるかな、、、 そんな事を考えつつ俺は先輩が待つ駐車場へ向かう。 ◇┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◇ 車のドアを開けて乗り込むと「お疲れ、体調はどう?」と、先輩に尋ねられ「お疲れ様です、大丈夫ですよ」とシートベルトをしながら答える。 (良かった、普通に話せてる) さっき色々思い出し過ぎてどうなるかな、とは思ってたけど·····なんだ、そんな心配する事はなかったな。 そう思った矢先、先輩が「そう、良かった」と、安心した様に短く答えて右手を伸ばし俺の額に触れる。 「ッ、」 突然の事に俺は驚いて反射で体がピクッと反応し、目が見開いてしまった。 (と、とと突然なに?!·····し心臓が五月蝿いッ) 今日の朝も同じ事されたのに顔が凄く熱くて困った。多分··········俺は今、顔が真っ赤だと思う。。。 少しして、 「·····熱は無いな」と、先輩は少し冷たい手を額から離す。 俺は「あ···当たり前ですっ!無理しないって約束だったんで」と、心臓が五月蝿いのを無視して可愛げが無い返答を返した。 (あぁああああ〜〜〜またやってしまった) どうしていつもこんな返ししか出来ないんだろ·····。 他のΩならきっと可愛い返しが出来るのに、、、 自分に呆れて俯いてしまう。 そんな俺に対して「はははっ、、そうだな、言い返す元気があって安心した」と、先輩は笑いながら俺の頭を撫でると車のエンジンを入れて、パーキングからニュートラルに変更しアクセルを踏む。 「あっ、俺の家寄ってもらっても良いですか?」 先程のやり取りで却下された事を再度お願いしてみる。 「別に何も要らないだろ」 「自分の服が必要です」 先輩の服はズボンが長くて引き摺ってしまうし、袖も手まですっぽり隠れてしまう位長い·····。 ドラマや少女漫画とかでいう彼シャツとかそんな可愛いもんじゃない。 「俺の服で十分だ」 (なんでこの人はこうも頑ななんだ·····) 結局、俺が折れて自分の家に寄ることも無く、そのまま先輩の家に向かった。
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