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尾崎さんは、帰りがてら郵便局や、スーパーの場所、クラスメイトの家、この町で一番長生きをしているおじいさんの家など見るもの全てを説明してくれた。
朝は徒歩十分だったはずなのに、なぜか一時間近くかかった気がする。
途中の角で曲がった尾崎さんと別れて、シバタ駄菓子店の看板に向かって走った。
「おばあちゃん、ただいま~!」
駄菓子屋の店先で、丸椅子に座って新聞を読んでいたおばあちゃんが顔をあげた。
六月といえど、今日は夏日の気温。
暑くないのかな? 気温が結構高いのに、と思ったら、おばあちゃんの背からは涼しい風が吹いている。
緑色の羽が回る古い型式の扇風機が、おばあちゃんに冷を運んでいたのだった。
「おかえり、キラリ。道に迷わず帰って来れたかい?」
「うん、途中まで尾崎カノンさんと一緒だったから」
「あら、カノンちゃんと。良かったじゃないかい、あの子は昔っから面倒見のいい子だからね、五人兄弟の長女なんだよ。きっとキラリの面倒もみてくれるさ」
ん? 私も妹分に加えられるってこと? 同級生なのにー!
「暑かっただろ? 好きなアイス選んで持って行きな? ただし高いのはダメだよ。それともう一本同じの取って、中庭に持ってってやって」
「え? ノビルも食べるの?」
「いや、ノビルは食べないよ。あれ? そういや、キラリに、ノビルの紹介をしたんだっけかね? まあ、いいさ。さっきからうちの庭の雑草むしってくれてる人がいるんでね、差し入れてやって。キラリも着替えたら手伝ってやっておくれ」
この暑いのに、草むしり!?
ゾッとしながら選んだのは食べたことのない輪切りの形をしたパインアイス。
それを二個手に取って、店の奥から家の中に上がり縁側へと向かう。
「あっ」
草むしりをする男の子がそこにいた。
背中をこっちに向けてしゃがみ込み、私には気付いていない様子だけど、アイツだ! 青山キラ!!
「あのっ!」
私のかけた声にようやく気付いて、こっちを振り向く。
額には玉の汗、ひゃあ暑そうだ。
軍手の甲でその汗を拭いながら、青山くんは立ち上がり、学校にいた時と同じように不機嫌そうな顔をしてこっちを見た。
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