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「キラが時々丁寧にブラッシングしてくれるからね。そこいらの血統書付きのワンコより、いい毛並みだろ?」
おばあちゃんの言葉に彼をみたら、照れたような顔をしていた。
「あ、そうだ、キラ! あんた、キラリにも散歩の仕方教えてあげておくれよ。ノビルのお気に入りの散歩コースを知っているのは、今じゃ私よりもあんたの方だしね。さ、そうと決まれば二人とも夕方の散歩行っておいで」
「「え!?」」
「ほらほら、陽が暮れちゃうよ。キラリ、明日っから朝は五時起きだよ? キラは五時半には散歩に出かけるからね?」
も、もしかして、今朝私が見たのは散歩帰りだったのか。
五時起きはツライ、起きたことがないよ……。
肩を落とした私に、おばあちゃんは笑う。
「キラリは運動神経抜群だって聞いたから、てっきり体力もあるもんだとばっかり思ってたんだけどねえ」
挑発的なおばあちゃんの言葉に顔をあげて。
「体力ならあるもん」
ノビルのリードを手にして、立ち上がった。
「おい、待てって」
散歩くらい一人で、とポールからリードを外した瞬間に。
「えっ」
リードを持った右手をノビルが突然力強く引っ張った。
「おい、絶対離すなよ、離すんじゃねえぞ!」
「え、待って、ねえ、ノビル!?」
「いってらっしゃい、夕飯までには戻っておいでー」
おばあちゃんの声に見送られ、全速力で走り出したノビルのリードをしっかり握りしめ、引き摺られるように走り出した。
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