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「柴田さんは、ご家庭の事情で三ヶ月ほどうちの中学に通うことになります」
家庭の事情が何なのかを、誰も突っ込んで聞いてきたりはしないことにホッとする。
「駄菓子屋の柴田さん家のお孫さんだそうで、今はそちらに住んでいるそうです。わからないことが多いと思いますので、皆さん柴田さんに色々教えてあげてくださいね」
はーい、とあちこちから相槌のような返事が飛んできて一安心した。
大丈夫そうかな? 受け入れてもらえそうな気がする。
「では柴田さん、自己紹介をしてください」
え? 自分で?
チラリと先生を見たらニッコリ微笑んで、私の名前を黒板に書き始める。
【柴田希星】
その文字に皆がざわついている。
わかってる、読めない、ってことだよね?
「柴田 希星です。都内から転校してきました。三ヶ月ほど、こちらでお世話になります。わからないことだらけですので、色々と教えてください」
増田先生の紹介から言葉を借りて、無難に自己紹介をしたつもりだった、けど。
ざわつく教室、耳をそばだてるとヒソヒソと『え? キラキラ』、『マジ? キラキラじゃん? ウケる』とあちこちで失笑しているような声が聞こえてきた。
途端に、嫌な気分になって唇を噛みしめた。
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