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第五話 魔力補充とメンテナンス
「やはり海の見えるオープンテラス席は素敵ですね」
リベルタの調理魔具に魔力を補充するためにやってきた。
「ありがとうございます。
でも、何度も食べに来てもらっているじゃないですか?」
確かに私はこの店が好きで何度も足を運んだ。
「いえ、いつもは客として食べに来ているので、こうやって定休日で店が開いていない時に来るのとはまた少し違う気がします」
ずっと憧れだった長谷川渚とこうやってお近付きになって、普通に話せているのがとても不思議である。
「それもそうですね…」
彼女は私が来た事に緊張している様だったが、本当は逆に私が緊張している。
今までは身分を偽り、顔を隠して食べに来ていたのだ…正体を認識された今とは状況が違い過ぎる。
「ちょっと待っていてください、珈琲でも入れてきます…」
そう言って、私をオープンテラス席に残したままキッチンの方へ姿を消した。
それにしても、今日の様な快晴に海を見ながら食事ができるこのリベルタは最高の店だ。
こんな素敵な時間は結構遠出をしたところで、なかなか味わえるものではない。
一流のシェフが調理しているのだから料理が最高なのは言うまでもない事だが、また来たいと思わせる様な落ち着いた空間もお気に入りポイントの一つである。
「お待たせしました」
彼女は珈琲と共に、昔私が作った調理魔具を幾つか持ってきた。
「砂糖とミルクはどうなさいますか?」
少し悩んだ素振りをしてみせる。
「かっこつけてブラック…と言ってみたいところではありますが、魔術師には糖分が必要なのです…。
それに私はかなりの甘党ですので…」
せっかく少し仲良くなれたと言うのに堅苦しい会話だけでは距離を縮められないと、冗談口調で訳の分からない事を言ってみる。
すると彼女はクスッと笑ってくれた。
「ではお客様、珈琲はブラックにしていただいて茶菓子に角砂糖をお口の中で融合させる…と言うのは如何でしょうか?」
やはり彼女は創作料理の天才だった。
「そんな発想はありませんでした。
そういう固定概念に縛られない考え方があなたの強みなのでしょうね…」
完全に私の負けだ…こういった素敵な発想はそういう【リベルタ】から生まれるのだろう。
「そんな風に褒めてもらえると嬉しいです」
結局は砂糖もミルクも入れて、いただく事にする。
「では、魔具を見せてもらいますね…」
彼女愛用のそれを見て驚いた。
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