第一話 寂れた魔具店

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第一話 寂れた魔具店

「いらっしゃいませ。  どの様な魔具をお探しでしょうか?」 「ここなら、フルオーダーで客の希望通りの物を作ってくれると聞いてきたのだけれど」  こんな寂れた店にくる客は魔術に執着を持った物好きか、本当に困っている者のどちらかだろう。  便利な物を欲する時、たいていの場合家電量販店に行くが、そうしないのには理由がある。  魔具が欲しいという客は科学で解決できない問題を抱えている場合が殆どなのだ。  何故なら魔具を作るのには手間がかかる為、電化製品ほど安価ではできないからである。  故に注文数は少なく、この店でも販売方法は客一人一人の要望に応えるフルオーダーメイドを採用している。 「はい、こちらで承っております。  どの様な物をお探しかおっしゃっていただければ…」  この女性は見覚えがある気がした…何処かで会った事があるのかも知れない。  テーブルに着く彼女を待たせて、カタログ類を用意する。 「珈琲か紅茶は如何でしょうか?」  商談には飲み物を用意するのが私のやり方だ。 「では珈琲を…」  カウンターの裏に入ると急いで用意する。  最近は特に科学技術の発展が目覚ましくて世の中はどんどんと便利になったが、そのおかげで魔具の需要は薄れている。  個人の魔力量に影響する魔術は術者によって出力が不安定になるという問題があり、魔術師が大量の魔力を封じて作った魔具が好んで使われてきた歴史がある。  封じる魔力をコントロールしておく事で個人の魔力量に依存せず、出力を安定させられるからである。
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