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第七話 ボナペティートの悪夢
事件が起きたのは彼女に魔具【ボナペティート】を作ってから約一年後の事だった。
「はい、アルス・マグナです」
水曜日の夜にかかってきた一本の電話に出る。
「良太君?
どうしたの…?」
彼は取り乱していて、マトモに話せる状態ではなかった。
「今行くから、家を出ずに待っていて…」
私は急いで店を片付け、シャッターを閉めた。
何だか嫌な予感がする。
息子と二人で住んでいた長谷川渚のマンションに到着し、玄関を開けると私は青ざめた。
血で真っ赤に染まる部屋と、倒れたままピクリとも動かない渚。
ライオンか虎の類にでも襲われたのかと思う程に食い散らかされた体には、私が渡した【ボナペティート】のナイフとフォークが突き刺さっている。
首に指を当ててみたが、もう脈はない。
仮に生きてくれていたのなら、治癒魔術を試みて多少なりにでも回復させただろうが、蘇生させる事は私にだってできはしない。
「どうして…」
涙がこぼれ堕ちる。
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