第八話 魔具の力量

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 私はいつもの様に夕食を用意し、息子に出す。  リミッターを解除した魔具を使わせる様になって一ヶ月程が過ぎただろうか…。  一週間に一度程のペースでスプーンやフォーク、ナイフを普通のものに変えているが、吐き出す事も体調を崩す事も無くなってきている。  彼女の魔力が彼に浸透しているに違いない。  この調子でいけば、これを使わなくてよくなる日も近いだろう。  そうすれば彼とももっと仲良くできるだろう。  今まで母親らしい事ができなかった分、たくさん愛情を注ぎ、たくさん可愛がってあげよう。  そんな事を考えながら息子の方を見ると、今日も完食してくれているのが分かった。 「美味しかった?」  私は彼に問う。 「うん、美味しかったよ…」  反応は順調だと思う。 「でもね、お母さん…」 「ん?どうしたの?」  彼は逆手で持つフォークを私の左肩に突き下ろした。 「僕はこんな量じゃ足りないよ…」  激痛が走る。 「大嫌いなお母さんを食べたいんだ…」  これが彼女の恐れていた魔力暴走だろうか…。  刺さったフォークを引き抜くと、繰り返し何度も私に刺した。  「ごめんね、良太…無理をさせて本当にごめん…」  いくら謝っても、時を戻す事は叶わない。  長い間彼を一人にして寂しい思いをさせた上、口に合わない料理しか出せなかった私を嫌っていたのだろう。 【ボナペティート】の第一効果「嫌いなものが食べられる様になる」が過剰に発動してしまっているのだろう。 「分かってあげられなくてごめんね…ごめん…」  朦朧とする意識の中で私は涙を流しながら彼を強く抱きしめた。  しかし彼はお構いなしにフォークを胸に突き立て、ナイフで肉を切り裂くと、狂った様に噛みついてくる。 辛かったのは私だけじゃなかった筈だよね…ごめん…。
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