第二話 海岸の人気イタリアン

1/2

9人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ

第二話 海岸の人気イタリアン

「こちらのお席でよろしいでしょうか?」  案内されたのは水平線の見える海岸沿いのオープンテラス席だ。  今は落ちぶれたとは言え、昔は魔術師として少しは名が通っていた故に、こんな有名店に素顔で来る訳にはいかない。  私を見て疫病神が来たとは思われたくもない。  SNSが普及しているこの社会では何が炎上の原因になるか分からないので魔術で顔の外見を変えてある。  自意識過剰だろうか?  だが、繁盛している店がダメになるのは一瞬なのだ。  誰もが私の事に気付かないならそれに越したことはない。 「素敵ですね」  ここが超人気で、なかなか予約が取れない店か。 「ありがとうございます」  店の内装と雰囲気が非常に良く、まだ注文すらしていないけれど私的には合格点だ。  席に着き、メニューを確認したところ各料理の名前が難しくて注文に迷う。  私はこの街に引っ越してきて明日から魔具店をオープンする訳だが、そんな記念に今日は少し奮発するのも悪くないだろう。 「すいません、オススメはありますか?」  もはや自分ではメニューを決められず、ウエイターさんにオススメを聞いてしまう。 「でしたら、当店人気メニューのこちらは如何でしょうか?」  人気ナンバーワンの「瀬戸内レモンソースと讃岐サーモンのカルパッチョ」 それから、ナンバーツーの「銚子産の鯖と自然栽培トマトのチーズ焼き」だ。  名前を聞いて、それに決める。 「じゃあそれを一人前ずつ…」  瀬戸内レモンと讃岐サーモン?  何と言う偶然か…。  一品で好物が両方楽しめるなんて夢の様な料理ではないか…。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加