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「あたしも」
「うん?」
「心のどこかで、望んでた気がする。それが可能なことなのかは、分からないけれど」
ルーシィは下を向く。自分の体が滅びゆくのを、その目で見つめる。何をしているのかと思えば、すすり泣く声が聞こえてきた。
彼女の涙は、見せたことがあったものだろうか。少なくとも、アイリアにとっては、不思議なものを見るような気分になる物だった。
「……ああ、悔しいなあ、悔しいなあ。毎回毎回こうなんだ。どうしてこんなことしなきゃいけないのかな、どうしてこんなことしなくちゃいられないのかなぁ……頼むよ。もうこんなことは、終わらせてほしいんだ」
「わかった。どんなことを思っているのか、あたしには全然わかんないけど、受け継げる限りを尽くすよ。それじゃあ、そろそろ」
「うん」
合体剣を上に掲げ、アイリアはひと呼吸。息を吸って、吐いて……また吸ってから、腹から息を一気に出し、無意識に声帯を震わせながら思いっきり振り下ろした。
硬いものを切断した音が聞こえるとともに、アイリアの視界は乱れた。
気付けば、アイリアは星空の下のような空間にいた。延々と、石畳のような、コンクリートのような、真っ黒で硬い路面が続いている。
「ここは、一体……?」
「ボクの記憶領域だ」
ルーシィの声。どこからするのかと見渡すが、どこにもいない。探していると、路面の黒色が一点に集まり、そこからルーシィが出てきた。
「ルーシィ……あたし、さっき首を……えっ?」
「うん。斬られたね。今はキミがボクの首を斬った瞬間。そして、キミがこの空間から出るまで、その瞬間なのさ」
「……まさか」
相討ちでも狙っているのかとアイリアは武器を構えようとするが、出せない。ルーシィは慌てて止める。
「待って待って、そんなんじゃない。ちょっと疑り深くなってるだろうけど信じてくれよ。ボクがキミを裏切ったこと、あったかい?」
「あった」
「あー……そうだった、裏切ったばっかだった。まあでも信じてくれ、今回は。さて、何から話そうか」
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