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【記憶、記録】
ルーシィの記憶領域というだけあり、映る景色を彼女の記憶をもとに自由に変えられる空間であるようだ。最初に映し出されたのは、アイリアとルーシィが頭を合わせた時の映像だった。
「うわ、何これ。ちょっと昔のあたしが目の前にいるのって、変な感じ」
「記憶領域って、こういうことがよく起こるんだ。そんなもんだと思っといて。さて、この時にボクは魔女が倒され次第、その魔女の記憶を見られるようにセットしたはずだ」
あれは、アイティオピスが起こしたとみられる連続殺人事件のことが報道されたくらいの頃。かなり各所で色々あったが、1ヶ月も経っていないだろうか。
魔女が倒され次第……倒され次第?
「それって、つまり……?」
「その魔女にはボクも含んでいる。ただ、ボクの場合はキミに記憶を見せながら、キミの記憶を見ている。これをやると、今のように記憶領域で会話が出来たり、記憶の中を旅することができるようになるんだ。そしてその記憶の旅を、今からする」
周囲の風景がまた変わる。今度の風景は、現代の地方都市のような街並み。多くの人々が、あまり現代と変わらない様子で生きている……ように見えたが、異様なものも見えた。
簡単に言えば、それは奴隷。明らかにこの存在が異質だった。ひたすらに機械的労働を繰り返す存在。現代の奴隷に例えられる者達も、ここまで酷くはない。
「ねえ、これってどんな記憶なの?」
「その前に、この場所の説明をさせてほしい。ここは……いや、この時代は、失われた文明の時代。魔女キュプリアの時代だ」
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