Eins:Kampf

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「えっ嘘でしょぉ!?」  腰が抜けるほど驚くアイリア(記憶領域にいるので、おそらくは形而上の腰が抜けた)。ルーシィの言うことが正しければ、これは12000年前の景色。まさか、ありえない、そんなに昔にこんな都市が……そんなことが頭を巡る。 「本当だとも。これから彼女のことを見に行くんだから。何か不明なところがあるのかい?」 「いや、これって、150年くらい昔、とかじゃなくて、もっと昔なわけ?」 「うん。あの森にあった建造物の跡だって、こんな感じの骨組みだったろ。かつての文明は、科学の力で発展していた世界。そして人々の格差が広がり、奴隷によって一部の人の私腹が肥やされた世界」  その跡が現代に残っていないのは、そのような世界が完全に跡形もなく滅びたことを意味する。跡形もなく滅ぼせるような人物というのは、本当に限られている。現代兵器でも、それほどのことをするにはかなりの労力が要る。  だが、この時代にはいたわけだ。 「でも、そんな世界は魔女キュプリアが破壊した。そして文明レベルが後退した世界の痕跡だけが残った……ってわけだね」 「ご名答、だ。キュプリアという魔女は、世界を一度リセットし、魔法文明の世界に作り変えた。その行いには当然多大な犠牲がある、暴悪の所業さ。これからボク達は、彼女の記憶に踏み入るんだよ」  ついて来て、とルーシィはそそくさと歩き始める。どこに行こうとしているのかと思いながらも、速めの歩きについていくアイリア。しばらくして、これはだと気付いた。  黒いショートヘアと、黒い服の少女。常に無気力な表情を浮かべている彼女の顔は、アイリアに瓜二つだった。
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