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「そういう奴ははり倒せばいいってもんよ。お前さんは、そういうの自信あるんだろ?」
「ある。確かにある、がな……」
口ごもる少女。彼女は戦うことに関しては自信があり、目の前の男だけでなく、世の中にいるどの生き物にも負けないという自負があった。だが、心を許している一部の人物──例えば、この男のような人物以外には、そのことを語ることはなかった。
そして、その自信の理由は、誰にも語っていなかった。
「イーリアス。キミなら既に察しているだろう。この世界の人々の生き方、キミの知識、そして今追っている人物が誰なのか……それを用いて考えれば、彼女が自分を語らない理由が、分かるはずだ」
ルーシィが言うように、アイリアには少女が自身の強さの理由を語らない理由が分かっていた。
「それは、あの人が唯一、この世界で魔法を使うことができるから……だよね」
「そうだ。しかも、後の時代の魔法使い達とは、比べ物にならないほどの力の持ち主だ」
きっとこの力のことが誰かに知れれば、誰もが恐れる。誰も自分のことを頼ろうとなどしなくなるだろう。彼女は誰かのために奉仕する以外の生き方を知らず、それ故にそれを諦めなければならなくなることを誰よりも恐れていた。
「しっかし凄いもんだ。お前さん、女にしては素の体格はいい方とはいえ……鍛えられた体格にはとても見えないがなあ。力仕事でも、その涼しい顔を崩したことないだろ」
「ああ、まあ確かに……なんならもっと任せてくれてもいいぞ、手が足りる限りでな。流石に私でも体は増やせないことは分かっておいてくれ」
冗談のように言っているが、決して冗談にもならないことだったりする。本当なら、彼女にとって分身体を作るなど造作もないこと。ただ、そういったあからさまなことはしたくない。
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