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しかし、無敵の兵士が一人いたところで、隊が強くなるかは別の話。ある戦場で、ついに少女のいる隊がほぼ全滅に追いやられた。援軍の要請は既に行っており、あとは待つだけだったが、待っているのはたった一人だけ。
どういうわけか何も攻撃が当たらない相手に困惑しつつも、敵兵達は容赦なく銃撃を浴びせてくる。それが鬱陶しい、そう思わせてしまったことが、少女を最初に魔女たらしめてしまったと言えよう。
「侵略者として、誇りもなく、目の前のものを撃ち抜くばかりの肉塊共が……肉片に、消し炭にしてくれる……!」
少女は速やかに敵兵の頭を掴むと、その頭を急激に変形する。この世の生き物とは思えぬ顔を経て、顔とすら言えぬもの、生き物ですらない何かになったその直後、大爆発が起きた。
爆発によって、敵兵は見事に全滅。かなり広範囲が吹き飛んだ。少女は自らの怒りに任せた行動のもたらした結果に狼狽した。
使ってしまった。自分の力の、より本質に近いものを。超常的な現象を起こす、後の時代に「魔法」と呼ばれるものを。
援軍は爆発を遠くで見て、急いで駆けつけた。出迎えたのは、たった一人の少女のみ。
「君は兵士か?」
「志願奴隷兵だ」
「つまり生き残りか。この爆発の原因に、心当たりはあるか?」
いい嘘が思い浮かばなかった。完全に周りが更地と化し、簡単に誤魔化せないのだ。黙っていても、自分だけがあの爆発で生き残った不自然さはかき消せない。
「……私がやった。私以外が全滅して、一転攻勢を図ろうとした結果がこれだ」
正直に言うしかない、そういう結論に至った。しかし当然、一同はこのような荒唐無稽な話に困惑するしかない。しばらく話し合った後に、このような命令が下った。
「上層部も交えて、詳しく話を聞くことになるかもしれん。ご同行願おう」
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