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「なんかさ、荒れる要素、ここまで来たらもう無くない?」
流石に救いのありすぎる展開に、アイリアも戸惑いを隠せなくなってきた。目の前にいる少女が、実は魔女キュプリアではなかったなどということはありえない。その強大な力もそうだが、あまりに自分と顔が似ていることに、運命の一つや二つ、感じない方が無理がある。
そんな彼女が暴悪の所業に走る理由が、もはや何一つ見い出せなくなってきていた。
しかし、帰ってきてからが問題だった。噂は広く聞かれていたらしく、誰もが急によそよそしくなった。しかも、良くないニュースが入ってきた。
「あの人だけは、変わらないでいてくれると思ったんだがな……」
少女は独り、ポツリと呟く。今までずっと話し相手になってくれた、あの男のことを考えていた。
どういうわけか、戦場でも一緒だった。そして、少女を残し全滅した隊にも、いた。不幸にも、彼は少女の視界に入っているタイミングに撃たれた。
異性として向けるタイプの感情というのは全くわいていなかったが、それだからこそ、対等な友人だった。
少女は自分のことを、人に尽くせればそれだけでいい仕事人間だと思っていたが、実際は人と話すことの楽しさが大きな支えになっていたようだ。一番信頼していた人はもう既におらず、それ以外の者は自分を避け始めた。
主人のように、相手がどんな人物であれ関係ないという考えを持てる者は希少だ。そしてその主人には、あれ以来会っていない。
少女を日々、孤独が蝕み続ける。やがては過負荷にもなる、その暗い影は徐々に差し込んできた。
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