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更に悪いことは続く。会っていないながらも、陰ながら少女を保護していた主人が、急激に体調を崩した。その影響で、奴隷に関する権限が、その息子に引き継がれることになった。
この新たな主人が、父親と異なり、少女のことをかなり恐れていた。彼が最初に行ったことは、少女を幽閉することだった。
いったい、どれだけの時間が経っただろうか。日時の感覚は完全に乱れ、心も壊れそうになってきた。食事も一切与えられていない。
「魔女が飢えるとどうなるか、知ってる?」
ルーシィはアイリアにこんな質問をしてきた。アイリアはそんな経験をしたことはないが、知識として知っていることがあった。
「死にはしないし、栄養失調にもならない。けれどだんだんと痩せてはいくし、普通の人間が味わえないほどの強い空腹感を味わうこともある……らしいね」
「そう。実際、すごくやつれてるだろ。それにしてもこんな豊かな時代にそんなことを知ってるなんて凄いな、マルギテスの実体験でも聞いたかな?」
魔女が味わった飢餓では、迫害を耐えていた頃のマルギテス──校長と、今のこの少女、どちらが深刻かは比べ難い。しかし確実なのは、この少女は完全に憔悴しているということだ。
何もしていないのに疲れ切ってしまった少女は、ずっと眠って過ごしていたが、ある日急に部屋のドアが開いて、目を覚ました。
「ご主人から直々に、仕事を任せたいとのことです」
変に畏まった口調で話してきたのは、いつか「体を増やせるなら増やしてほしい」と言ってきた、あの使用人の女であった。
だが、少女にとって予想外なことが一つあった。
「本当に……あなたは……」
一瞬、あの人物と同じ人物なのかと疑ってしまうほど、相手は老けていたのだ。
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