Zwei:Erinnerung

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「ええ、確かに私はアナタが思っている人物と同一人物」  少女は大いに戸惑う。ずっと寝ていたが、なぜ自分は生きているのか。何も食べなくても栄養失調にはならないために、ちゃんと動く頭脳で考えても分からない。  しばらく考えて、自分に起きた経年変化に気づく。しばらく置物同然だったからか、体は埃を被っており、髪はベタベタで、しかもかなり伸びている。 「一体私は、どれだけの間あそこに……?」 「およそ……20年。色々聞きたいことはあるけど、今やるべきことは……そうね、とりあえず人に会うのだから体を入念に洗っておきましょうか」  そう言って浴場へと連れて行かれた。やはりと言うべきか、どうもよそよそしい態度であった。話そうにも事務的な話しかされないし、体の汚れはしつこくて落ちづらく、何より髪が長すぎて洗いにくいことこの上なかった。  なんとか数十分をかけて洗い終わって、面談室のような場所に移動した。 「色々聞きたいことはある。あるが……一番聞きたいのは、なぜ今になって幽閉を解いて、今更何の仕事をさせる気なのかということです」 「我らのご主人は、あなたをずっと監視していた。飲み食いを一切させなかったのは、最初はじわじわ殺すつもりだったからだけれど……不自然なくらいに、アナタは生きていた」  ここまでは、普通に分かる話だ。  囚人の監視は当然。食事が一切無かったので、殺すつもりなのだと分かったし、空腹感はあったものの、体調を崩すどころか、目眩だとかそういった感覚もあまり無かったのは少女自身も驚いていたところだ。
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