Zwei:Erinnerung

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「ん……眩しい……視力は失われていない、か……」  静かに呟きながら、キュプリアはゆっくりと立ち上がろうとする。20年眠り続けても忘れなかっただけあり、今回も立ち方は忘れていない。ふらつきながらも、順調に立つ。  それを見て怯える男が一人。どうやら、先程不安そうに話していた男と同じようだ。そしてもう一人の女は至って冷静。そして、こう告げてきた。 「そなたの事は知っておる。200年前に眠ったというのにすぐに目覚めるとは、大した御方じゃ。そしてそなたにこそ、頼みたいことがある」  わざわざ自分を選んでくるのはなぜかと、キュプリアは考えた。何しろ例の件で人間不信になっている節があるために、いいように利用されやしないかと不安になった。 「一体お前達は……何がしたい?」 「ひいいっ、怖えよ〜!」  男はかつてキュプリアの友人だった人物のように筋肉質で逞しいのだが、どうもかなりの小心者らしかった。すぐに怯えて物陰に隠れる。 「こら。……すまぬな、私の助手君なのだが、このようにすぐにこうなるものでな」 「いい。人とはそういうものと、割り切っている。お前がああならないのが不思議なくらいだ。それで、お前の肝の据わりようは分かったが、何がしたいんだ?」 「まず私とそなたは、似た者同士じゃ。国消しの伝承は、詳細ではないが伝わっておる。祖国に力を忌み嫌われた、弾かれ者……そうであろう?」  当たってはいるが、確かに詳細ではない。祖国のことは正直本当はどうでもよかったからだ。  正確なのは、自らの拠り所を失い、幽閉された挙げ句、力を未来に繋ぐという名目の上に嫌いな人間に純潔を犯されようとしていたことが耐えきれなかった、というところだ。国消しは、その憎しみが連鎖しないように、広い範囲で文明ごと憎しみを消し去っただけに過ぎない。
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