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魔女の宣言通り、結界が展開される。敵兵を遮断し、押し出し、街の安全は完全に保たれた。
だが。
「はぁ、はぁ……やってしまった……勢いで……また……!」
その場の感情で必要以上のことをしてしまうのはただの癖だろうか。それとも、コントロールができないように、この哀しき少女を創ったモノがあるのだろうか。
この街から人は、消えた。キュプリアの結界は、魔力の無いものを徹底的に拒んだ。この時代の人に、魔力というものがあるはずがない。よって、結界の展開に伴い、一斉に消し飛んだ。
どういうわけか、小動物や植物は残っていた。その分、なぜ人だけなのだと、そう嘆かずにはいられない。
誰かにこの行為を擦り付けることはできない。裏切り者を殺したわけではない。逃げることもできない。記憶を消し去る能力は、都合が悪いことに持っていない。であるが故に、人が元々持つ防衛機能が働く。
「そうか、そういうことだったんだな。護るなんてことを、この世界の神様という奴は望んでない。フフッ……ヒヒヒッ」
乗り物には、敢えて潰れることで、衝撃を和らげる機能が備わっているのだという。心も同じだ。完全に崩壊して機能を停止してしまうような衝撃を受けた時、こうやってぐしゃりと、ねじ曲がって、歪んで、キュプリアの心は形を辛うじて守った。
「うっ!」
ルーシィが突然歯を食いしばり、顔を歪める。アイリアが心配して近寄ろうとした瞬間に、二人は同時に、強く弾き飛ばされるような感覚に陥る。
そして、キュプリアの記憶の映像が、いつの間にか消えていた。
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