Eins:Kampf

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 その一方でルーシィは容赦がなかった。アイリアを追尾していた球体は十分に対象に近付くと炸裂するようになっていた。即座にアイリアは自らの闇魔法の力の一部、純然たるエネルギーから生まれる斥力で緊急ガードをする。  このガードは概念的でないものなら何でも防げるが、80秒のインターバルを要する。 「イノセントウォールズ、16枚展開!」  大量に壁を展開することで、まずはこのインターバルを攻撃の見極めに集中する時間として使いつつ、時間稼ぎも行うことに。ルーシィの移動速度は、走るにも飛ぶにもアイリアよりはかなり速い。だが、壁同士の間隔と向きを調整し、すぐに周り込めるようにしてある。  炸裂弾と、ルーシィの武器、それぞれの挙動を壁を犠牲にしながらよく見る。物理学的分析、筋肉の動き、魔法の使い方──頭脳をフル回転しながら分析する。  やはり、流石は真紅の目の持ち主。今までほとんど見たことのない、エネルギーロスがあまりに少ない魔法使い。特殊な魔法の才能には、彼女ほどアイリアは恵まれていない。  だが、アイリアは科学の才能には恵まれていた。物理学で魔法を捉えることについては、誰よりも長けている。自分のものも、他人のものも。 「ズルいことするじゃないか。そうだよ、誉れはここにはいらない。少しずつ分かってきたかな?」 「分かりたくなかったけど、だんだんとね……」  とはいえ、普段ならかなり硬い防壁であるこの「イノセントウォールズ」というものも、一瞬で壊されていくので恐ろしい。仮にもトイフェル家当主の弾幕を受けきった実績のあるこの壁が、16枚も展開されているのに、80秒もつかが怪しい。1枚あたり5秒もてば80秒だが、こうなると5秒の長さを実感させられる。
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