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「えっ何、もしかしてわざと負けたとかそういうやつ?」
ちゃっかりととんでもないことを言うルーシィに、アイリアは心の底から引きそうになっていた。特に「負けたのだってそうだ」というのが気になっていた。あの苦しい思いは何だったのだ。
「いや、それは誓ってないと言えるよ……キミに全力を出させて、それでもボクに及ばないならボクがトドメを刺すつもりだった。それがおそらく、ボクとしては一番辛い結果だ。キミのためならボクはどうなってもいいはずなのに……」
「言うなっ!」
アイリアは、勢いよく立ち上がるとルーシィの頬に往復ビンタをかまし、口を押さえつけて押し倒してしまった。驚きながらも、ルーシィは少し赤面している。感情を押さえつけるタガが外れたのか、露骨に反応が出るようになったようだ。
若干、気持ち悪い。アイリアもそう思っている。
「もご……ほぉ……」
「若干恍惚としないでよ気持ち悪い……ああ、なるほど、心の底ではずっとそういう感情であたしを見てたわけだね。それはいいんだけどさ、別に。でも自分がどうなってもいいとか、そんなこと言わないでよ」
自己犠牲だとか、自己卑下だとか、そんなものは足枷にしかならない。アイリアが強く実感したことだ。その結果、ルーシィの頸を落としたわけだが。
「悪かったよ……でもさ……」
「でもじゃない。そりゃあエンゼルにこっぴどく怒られるわけだよ、あたしがこんなになるんだもん」
乱暴にルーシィを投げ飛ばして、アイリアは元の位置に戻った。多分エンゼルは何度も叩きつけたんだろうな、と思いながら。
それくらい、珍しく苛立っていた。
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