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そして、全ての壁は砕かれた。絶対防御を使うまでのクールタイムは、残りまだ10秒もある。これ以上の枚数を展開するのは厳しい上に、再展開も80秒どころでない時間が必要。
守りが無くなり、自らの手で弾くか避けるかしかなくなる。いきなり戦闘に突入して、いきなり絶体絶命。
この状況で、アイリアはせめてもの時間稼ぎ……には走ることはなかった。逆にルーシィに真正面から向かっていった。根拠はない。それが望ましいと思った、それだけだ。
「でやあああっ!」
「どうやら、頭では何をすべきか理解できてきた、ってところみたいだね」
ルーシィがひらりと避けながら手を地にかざすと、互いに地面にふわりと落下していく。自分にも同じ条件を強いながら、飛行を制限したようだ。
アイリアは地面に落ち、ルーシィは大きな遺構の上に飛び乗って見下ろす。
「いたた……ルーシィ、もしかして安全なところからあたしのこと嬲り殺しにでもする気!?」
「それも可能なのかもね。ただ、ボクがしたいことはそれじゃない。とにかく、向かってくるんだ。ボクの真下から、直接こっちに飛びかかって、キミの意志を見せてみろ」
手招きしながら言い放ったルーシィに向かっていくアイリア。ちょうど真正面に立った時、彼女は感じた。「天辺まで跳んでいける」と。その瞬間は、飛行制限が解かれた瞬間だった。
アイリアは真上に跳躍、ルーシィもそれに合わせて飛び降り、武器を互いに構える。そして今にも、二人はぶつかる……かと思われた。
しかし、ルーシィが放った重い一撃を、アイリアが大剣で受けて推進力にしながらただ退けただけだった。ルーシィの目は、じっとりと、細まった。
「残念だよ。キミにはまだ心が足りない」
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