Zwei:Erinnerung

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【魔女の帰還】  気が付けば、アイリアは元の場所──結界の森の遺構、玉座の間にいた。ここは、キュプリアが守りたかった場所。守るための結界が、守りたい人を弾き出してしまった。受け取った記憶に思いを馳せる。  しかし、そんな時間はほとんど無く、すぐそこにある首無しの体が目に付いた。ルーシィの服を着ているその体は、だんだんと消えてゆく。光り輝く塵となり、空に舞っていくのだ。 「あ、ああ、待って……」  引き止めようとしても、それで止まりはしない。下を見てみると、ルーシィの顔が落ちていた。安らかに眠っている。こちらは、消えていかない。どういうわけか、消えていかない。  もしかしたら、まだ生きているのではないか。そうだ、これさえ残っていれば、ひょっとしたら。そう考えてアイリアはその顔を持ち上げる。切断面に少し触れると、何やらサラサラとした感触がした。  光る塵。切断面を触ったら、アイリアの手に付いた。きっとこの塵と同じものに、もうなっている。ただ、最期の力でこの形だけでも保とうとしたのだろう。  つまり。第5の魔女アルクメオニス、ルーシィ・フューグスは、間違いなくここで死亡したのだ。 「……うん。置いていかないよ。一緒にこの森を出よう。そこで、あたし達のこの旅は、終わるんだ」  今すぐにでも泣き叫びたい気持ちを堪える。自分がやったことには、責任を持つ。自分に託された願いも、思いも、受け取っていかなければならない。  両腕でしっかりと、ルーシィの亡骸を抱きかかえながら歩く。涙が流れても拭えない。だんだんと襟が湿っていく。来た道を戻るのは、意外にも容易かった。
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