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森の外。先程まで強烈な魔力に曝されていたということがよく分かるくらい、体が軽く感じる。
そして、軽くなるのは……腕に乗っているもの。
「あ……行っちゃう……だから待ってよ、キミの行く場所は、そんなところじゃ……」
塵の飛ぶ先を追っても、戻ってこない。やがて全てが塵と化し、空を舞うものとなった。手が空いたその瞬間から、それを掴もうと必死に手を出すアイリアだったが、虚しく、手には何も残らない。
「何も、残らなかった……う……うぅ……」
せめて形見の一つ、残してほしかった。この世の理の残酷さを思い知る。魔女は身に着けていたものは何一つ残さずに消えてしまう。ルーシィには何か取り外して遺せるものもなかった。
あたしは、何を遺せるの?
何か、自分自身の思い出を刻める、象徴的なものは無いかと、思いついたようにアイリアは自分の体を探る。
「……あった」
頭に触れて、それに気付いた。花の髪飾り。真っ白な花の髪飾りは、幼い頃に親から貰ったもの。とても気に入っているし、特徴としてしっかり認識されてもいる。
そして、似たようなものがあったのではないか、自分によく似た、黒い原初の魔女にも。そう考えるのであった。
荷物を置いてきた、森から離れたバスの停留所に向かう。ルーシィに、予め手ぶらで行くように伝えられていた。その理由も、今なら分かる。思えば、ルーシィはそもそも荷物が少なかった。
荷物を手に取ると、電話がちょうどかかってきていた。発信者は、エンゼルだった。
「もしもし、エンゼル?」
『あーアイリア、いきなりだけど暗い声出してる暇無いわよ、さっさと学生寮に来なさい。どれくらいかかる?』
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