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ダイイングメッセージは『へ』✨😜✨💕
湘南海岸の砂浜で、早朝、ひとりの男が首を鋭利な刃物で切られて亡くなっていた。
男の名前は阿久堂 凱(25歳)。元ホストでイケメンだが女性を喰い物にする悪党だ。
殺したいと怨みに思っているヤツはごまんといるだろう。
そして今回、彼は湘南海岸の砂浜で殺されていた。財布やアクセサリーは盗まれていないことからモノ盗りの犯行とは考えられない。
しかも砂浜には被害者が今際の際に書いた『ダイイングメッセージ』が残されていた。
それが、『ヘ』と言う字だ。
「フフゥン、簡単よ。この世で起こる全ての謎はこのレンタル探偵アンジェリーナに解かれたがっているのよ。容疑者の中から『へ』の付く人が真犯人なの。決まりだわ。この美少女探偵アンジェリーナにとって、あまりにもイージーな事件よ」
「ええェ……?」まさか。そんなに安易なのかな。
「もっと難解で、呪われた『ダイイングメッセージ』とかを探していらっしゃい。ジャスティン!」
リナは自信満々に胸を張って命じてきた。
「ううゥ……、呪われたッて」
そんなのは無理に決まっている。この事件だってやっと見つけたのだ。
それにしても奇怪な事件だ。
『へ』と言うダイイングメッセージも然ることながら更にこの事件は不可解な事があった。
第一発見者の証言ではその砂浜には被害者の足跡しかなかったと言うのだ。
つまり犯人は足跡も残さず、被害者の首を切った事になる。
まさか幽霊が首を切ったわけではないだろう。
そのため第一発見者も有力な容疑の対象だ。被害者を殺害し、犯行を偽装するため第一発見者を装ったのではないかと言うのだ。
第一発見者は辺見萌(20歳)。
可愛らしい女子大学生だ。阿久堂凱のために莫大な借金を背負わされキャバ嬢をして返済している。
スタイル抜群で白いTシャツが巨乳を際立たせている。
彼女の証言では阿久堂凱からラインで『借金を返す』と連絡があり、急いで湘南海岸へ来てみると彼が殺されていたという話しだ。
もちろん彼女の証言を鵜呑みにすればの話しだ。
当然のコトだが警察だって疑って掛かるだろう。
証言した辺見萌も容疑の対象だ。
♢♢♢♢♢
ボクたちは遺体の発見現場となった湘南海岸の浜辺へ急行した。
まだ早朝だというのに海岸線は警察関係者で大賑わいだ。
殺害現場となった砂浜では容疑者ら四人の立ち会いの元、現場検証がされていた。
そこへ颯爽と美少女探偵アンジェリーナが登場した。明らかに場違いなコスプレだ。仕方なくボクも彼女の後に続いていく。
「皆様、ご機嫌よう。この事件は私が警察に代わって解決いたしましょう」
リナはダンスでも舞うように華麗に登場した。おそらくアニメの秘密探偵アンジェリカのマネだろう。
「ぬうぅ、誰だ。お前は」
現場の責任者である鰐口警部補が眉をひそめて睨んだ。名前同様、鰐のように怖い顔だ。
「私こそ、ご存知、レンタル探偵アンジェリーナ!
依頼されれば、たとえ地の果てでも参上しましょう! ホォッホホホーー」
リナはクルクルとダンスを舞い高らかに笑った。
さすがにアイドルを目指していただけはある。華麗にミニスカートを翻えし見事なダンスステップだ。
「な、レンタル探偵だとォ? 誰が依頼したんだ」
鰐口警部補は辺りを見回した。
「関係ないわ。素敵でハッピーな殺人事件のあるところ美少女探偵アンジェリーナあり! さァ、この私が来たからには全ての謎は解かれたがっているのよ」
「ぬうぅ、なにを言っているんだ。この娘は」
鰐口警部補も呆れた顔だ。
「たとえ神の目は誤魔化せてもこのレンタル探偵アンジェリーナの目は誤魔化せないわ。
辺見萌に、真犯人は決定!!」
いきなり美少女探偵アンジェリーナは辺見萌を指差した。
まるでアイドルの振り付けのように華麗にポーズをつける。
「え、違うわ。私じゃないわよ」
巨乳の容疑者、辺見萌は首を横に振って否認した。白いTシャツの下の巨乳も揺れる。
「そうね。どこのサスペンスドラマの真犯人も最初は『私がじゃない』って否定するわ。
そんな事は想定内のセオリーよ!!」
「でも……」
「わかっているのよ。ご覧なさい。砂浜に残っている足跡は被害者のモノと貴女の足跡だけ。
しかも貴女はダイイングメッセージの『ヘ』から始まる辺見萌。
もう真犯人は貴女に決定!」
また派手なポーズをつけて指差した。
「そんなァ……」辺見萌も不満げな顔だ。
「言い訳など聞く気もないわ。さァ、ジャスティン、とっとと逮捕しちゃいなさい!」
上から目線でボクに命令した。
「まッ、待ってよ。リナちゃん……、いやアンジェリーナ!!
真犯人は彼女じゃないですよ」
慌ててボクは否定した。このままリナに暴走されたら冤罪を生むのは必至だ。
「あァら、何よ。巨乳だから真犯人じゃないッて言うの? あいにくね。このアンジェリーナには、そんな色仕掛けなんて通用しなくてよ」
リナは悔しそうに辺見萌の巨乳を睨んだ。辺見萌も困惑気味だ。
「いえ、巨乳だからと言うわけじゃないですよ。だってもし彼女が被害者の首を切って殺したとすれば、返り血を浴びることになるでしょう」
彼女の真っ白なTシャツには返り血は見られない。
「フフゥン、なるほど、助手のクセになかなか、やるじゃない。じゃァ、さっさと次の容疑者をお呼び!」
リナは、まるで自分の部下のように鰐口警部補へ命じた。
「ぬうぅ……」
警部補もムッとして次の容疑者を呼んだ。
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