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「なんで、トンビが現れたら晴れだ」
と少し離れて行正は言った。
ホッとしたせいで、饒舌にになり、咲子は言う。
「現れたらじゃなくて。
トンビが夕方に鳴いたり、輪を描いて舞い上がったら、次の日は晴れなんだそうですよ。
ちなみに、朝鳴いたら、その日は雨だそうです」
「……今日、夕方鳴いて、明日の朝鳴いたら?」
「……雨なんじゃないですかね?
天気変わりやすいんで」
と咲子はおのれの天気予報の役に立たなさを認めて言った。
「ちなみに雲が乱れ飛んでたり、夜霧が深かったり、星の光がチカチカして見えたら、次の日は風が強いそうです」
「ほう」
「敵の城に火をつけるのに好都合です」
「……お前は、いつ、何処の城に火をつけるつもりだ。
それも、『主婦乃友』か『婦人画報』に書いてあったのか?」
「いえ、忍者の知恵です。
お読みになりますか?」
と流行りの少年向け雑誌を持ってくると、
「読もうか……。
また歯を食いしばって」
と行正は言う。
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